疲れにくい体をつくるには、何をどのように食べるといいか。医師の山下明子さんは「炭水化物(糖質)を少なくし、脂質を多く摂取し『ケトン体』を増やすことで、すぐに空腹を感じたり、疲れたりすることがなくなる。昔のイヌイットの食生活が体現するように、中性脂肪を増やす原因は糖質であり、油ではないことが、科学的に証明されてきている」という――。
※本稿は、山下明子『食べる瞑想』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
糖質の19倍も長持ちする脳のエネルギー
「ケトン食」という言葉を聞いたことがありますか? これは、糖に代わるもう一つのエネルギー源「ケトン体」を増やす食事法のことです。
これまでは「脳のエネルギーは糖質だけ」と考えられてきましたが、じつは近年、ケトン体も脳のエネルギーになることが明らかになってきました。しかも、なんと糖質の19倍も長持ちすることがわかっています。
例えば、朝食をパンとバナナといった糖質中心のメニューにすると、血糖値は急に上がって、およそ2時間後に元のレベルに戻ります。そのため2~3時間後には、もうお腹がすき始めてしまいます。
一方、ケトン体を増やすメニューであれば、血糖値が急に上がることもなく、安定してエネルギーを作り続けられるので、すぐに空腹を感じたり、疲れたりすることがないのです。
さらに、糖質は食べすぎると中性脂肪に変換されて体に蓄えられ、肥満の原因になりますが、ケトン体はすぐにエネルギーとして使われるため、体内で脂肪として蓄えられにくいのも特徴です。
それだけではありません。ケトン体は細胞の老化を防いでくれるので、肌のツヤがよくなったり、内臓の病気になりにくくなったりする効果も期待できます。また、がんの予防や進行を抑える働きがあることもわかっています。
アメリカではもう100年以上も前から、ケトン体を使った食事療法がてんかんの治療に用いられてきました。近年では、パーキンソン病や認知症にケトン体を使った治療が効果的だという報告も数多く出ています。
このようにケトン食には、多くのメリットがあるのです。
