東映アニメーション 平山理志プロデューサーインタビュー
『劇場版総集編 ガールズバンドクライ』平山理志Pが語る TVアニメ終了後もファンを純増させた仕掛け
2025年10月21日 15時00分更新
ライブと聖地巡礼の両輪でTVアニメ後もファン増加中
アニメ『ガールズバンドクライ』が劇場映画として帰ってきた。まず前後編の総集編を公開し、その先には新作映画も決定している。本連載でも前回、3DCGのオリジナル作品をイチからスタートさせてファンを獲得した道のりを平山理志プロデューサーに語っていただいたが、今回はヒットの「その後」をうかがう。
アニメの再始動やTV放送後にもXのフォロワーが10万人以上増えたのは、声優も務めるバンド「トゲナシトゲアリ」の武道館レベルでの人気もあるが、それ以外にも理由がある。動画やライブ、そして聖地巡礼やグッズなど、さまざまな間口を用意することが「ファンがファンを呼ぶ」現象につながっているという。平山Pが実践した「今の時代に刺さるアナログ的な手法」とは?
『ガールズバンドクライ』最新情報
★TVアニメを再編集した総集編映画が公開
『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂走曲』→公開中
『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【後編】なぁ、未来。』→11月14日公開
★完全新作映画が制作決定! ティザービジュアル発表
★2026年2月から3月にかけて、トゲナシトゲアリ初の全国ツアー「トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”」が全国6ヵ所で開催。
★ゲーム『ガールズバンドクライ First Riff(ガルリフ)』制作決定!
総集編だが新作パートたっぷり!
―― TVシリーズを再編集した劇場版総集編は前編・後編の2部作です。今回、映画として製作する際にどのような方針を立てられましたか?
平山 総集編では、初見の方でも気軽に見てもらえるように、上映時間は120分以下に抑える方針にしました。そしてTVシリーズからのファンにも楽しんでもらえるよう音響を一新して、新作パートを追加しています。
―― 新作パートについて教えてください。
平山 前編に関しましては、オープニングとエンディングを完全新作にしました。本編中そして後編の予告にも新作パートがあります。
実はTVシリーズで「シナリオにはあったけれどTVの尺的に泣く泣く落としたシーン」がありまして、そこを復活させたりしています。たとえばTVシリーズ第1話にあった、仁菜と桃香が歩道橋の上で和解してカラオケに行くまでの間に会話シーンを追加しています。3話では川崎ラゾーナで初ライブに臨む仁菜が、着ていく衣装に悩む様子を入れました。
劇場版では酒井監督がすごく悩みました。どうすればTV13話分を映画の尺に収められるのか。そしてどこに新作カットを入れるのか、と。
―― 尺を削らなくてはいけないのに、TVで落とした部分を追加したのですね。どうしてですか?
平山 追加することで人物の心情がよりわかったり、物語上の意味が出てきたりするシーンがあるからです。TVでは5話にあたる、仁菜たちの川崎セルビアンナイトでのライブには、ある人物が居るところを酒井監督が入れました。そうすることで物語の後半、その人物が仁菜に伝える言葉が活きてくるようになっています。
―― 物語がより深く見える、ということですね。
平山 はい。そして3DCGも見どころです。5年分の進化がありました。東映アニメーションでは凄腕のアニメーターの方々によって映画『ドラゴンボール超スーパーヒーロー』『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』などを通じ「アクション」が進化したのですが、そこに今回、「日常芝居」が加わりました。
3DCGで人物が立ったり、歩いたり、座ったりする。アニメの動きで「自然に歩く」って一番難しいんです。その成長は新作パートで存分に活かされています。
―― OPのような目を引く部分だけでなく、一見地味な部分にまで手をかけていらっしゃいますね。もっと派手なシーンを追加して、「この映画で興収100億行こう!」という方向性もあったと思うのですが……。
平山 派手なシーンの追加ですか……。それは考えたことなかったですね。基本的に物語がど真ん中にある作品なので。総集編でもそこを大事にしました。そして、先日の武道館ライブ(9月23日「トゲナシトゲアリ LIVE in 日本武道館 “奏檄の叫”」)で発表した「完全新作映画」にも期待を持っていただけたらと思います。
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