「ヒートショック」という現象は医学の中にはない 入浴中の死亡事故がニュースになるたび、新聞やテレビをはじめ、多くのメディアが「ヒートショックに注意」という誤った報道を続けている。今冬もその文言を何十回も見聞きした。医師でさえヒートショックという言葉を使って入浴に関する注意を促している。 【図表】意識レベル別にみる入浴中の生存者の状況 だが結論から言うと、「ヒートショック」という現象は医学の中にはない。国内で生まれた造語のようで、国際的な病名には登録されていない。人口動態統計(厚生労働省)にヒートショックという死因は存在しないのだ。 それでは入浴中に死亡してしまう原因は何なのか。真相に迫る前に、多くの人が死因と思い込んでいるヒートショックについておさらいしよう。 暖かい居室から、冷えた脱衣所や浴室に行って服を脱ぐと血管が収縮して血圧が上昇し、その後に湯につかると徐々に血圧が下がる。そのような