この原稿は、昨年(2012年)ロンドン五輪の前に、日本経済新聞7月8日付の書評欄「今を読み解く」に書いたものです。以前、この“蔵出しノンジャンル編”で蔵出ししたこともあるんですが、大幅に加筆、少し形を変えて再登場です。 尚、ここに紹介した「原稿と本」は、NOBORDER-SPORTSの「スポーツと文化」「スポーツの本」のコーナーでも紹介されています。 今や陸上競技の世界は、短距離走も長距離走も、「黒人選手」だけで争われるようになった――と多くの人が思っている後がいない。しかし……。 川島浩平『人種とスポーツ~黒人は本当に「速く」「強い」のか』(中公新書・2012年)は、誰もが思う「人種論」のナンセンスさを教えてくれる。 たとえば400mリレーでは、日本記録よりジャマイカ記録のほうが速い。が、ドミニカ記録よりは日本記録のほうが速いのだ。ジャマイカとドミニカに住む「黒人」は、まったく同じ人種と