2025年版『スーパーマン』(ジェームズ・ガン監督)が新しかったのは、「いま現在、私たちの生きる社会において〈もっとも強い者〉とは、他者に優しく、思いやりの心を持てる人物のことだ」という視点からスーパーヒーローを描き直した部分にあるのではないか。なぜクラーク・ケントはスーパーマンと呼ばれるのか。それは彼が空を飛べるからでも、怪力の持ち主だからでもない。わけへだてなく人に優しく親切だからこそ、彼はスーパーマンなのだ。この、あまりにも直球すぎる指摘に虚をつかれた。なにしろ私たちは日々インターネットを通じて、陰湿で攻撃的な言葉にさらされすぎている。皮肉や冷笑、揚げ足取り、相手を論破するためだけに考え出された虚無的な理屈、激しい罵倒や品のないいやがらせ、弱者やよそ者を排除する冷徹な考え方こそが、頭のいい人間の取る合理的な戦略なのだという論理が幅をきかせている。社会のリーダーや権力者が率先してそのよ