護良親王
もりよししんのう
後醍醐天皇の皇子の諱の「良」は、「よし」「なが」のどちらかで呼ばれるが、「よし」は根拠になる史料を室町時代まで遡れるのに対して、「なが」は江戸時代にならないと出てこない。
「大塔」も「おおとう」「だいとう」の両方で呼ばれるが、由来となる塔が「おおとう」である事から、そちらに揃えて呼ばれる事が多い。
後醍醐天皇の子で、幼少時に出家して僧侶となり、血筋もあり若くして梶井門跡を継ぎ、比叡山延暦寺の天台座主になる。当時の延暦寺は平安時代末期の治天の君・白河法皇ですら「この世でわが意に沿わぬ3つのもの」のひとつと数えられるくらい政治・軍事・経済において強大な力を有しており、現在では幕府を打倒し醍醐天皇の治世を理想とした後醍醐帝が延暦寺を味方につけるため、天台座主として送り込まれたと考えられている。親王も父帝の意を汲んで武芸を好み、日常的に訓練をしていた。もちろん、現在考えられているファンタジー職業の僧侶とは違っており、織田信長の焼討以降、豊臣秀吉や徳川家康、徳川家光によって再建された後の歴代の天台座主がそんな事をする必然性はない。
後醍醐天皇が鎌倉幕府を倒そうと挙兵した際に呼応して、後醍醐天皇が隠岐に流されていた間も近畿地方の各地を転戦するとともに、令旨を出して反幕府派の武士を募った。この時同時に後醍醐天皇も綸旨を出していたため、二人の関係が密かに悪化する。自らも村上義光、赤松則祐等の手勢を率いて吉野、熊野と転戦する。
鎌倉幕府が滅亡すると、六波羅探題を滅ぼし、鎌倉を陥落させた軍勢の大半にも息が掛かっている足利尊氏を敵視した。足利側から書かれた史書『梅松論』では後醍醐天皇の意向を受けて新田義貞や名和長年そして楠木正成らと組んだ親王が尊氏を倒そうとしたと記録されている。
征夷大将軍に任命されてからも、成良親王と尊氏の弟・足利直義がいた鎌倉への牽制のために義良親王と北畠顕家を奥州に派遣する事を進言するが、後醍醐天皇は自分の綸旨を差し置いて令旨を出していた護良親王を尊氏よりも危険視し、捕縛して鎌倉にいた宿敵・直義に引き渡す。この一件に対して『梅松論』によると「武家(尊氏)よりも君(天皇)が恨めしい」と親王が述べていたという。
鎌倉では塗籠(地下牢的なものと思われる事があるが、実際には土壁で囲んだ部屋)に幽閉され、幕府残党軍を率いる北条時行に鎌倉が攻撃された際に、時行が護良親王を擁立する事を恐れたといわれる直義の命令で、護良親王は殺害されてしまった。(一説には刺客の振り下ろした太刀筋に歯を立てて最期の抵抗をしたとも言われている)
- 学研:まんが人物日本史の『足利尊氏』と『楠木正成』の主要登場人物。前者は厳しい戦闘にも耐え得る逞しい偉丈夫で、手柄を誇る余り尊氏を敵視する序盤のライバル。後者は残されている肖像画を可愛らしくデフォルメしたイラストで描かれ、行者・僧兵・鎧・束帯と色々な姿に変装し、関西弁ではしゃぐコミカルさもある。『まんが太平記』ではみずらを結った古代風の髪形をした青年。
- 小学館の『日本の歴史』:スリムな体型で端正な顔立ち。後醍醐天皇に見捨てられて捕まった時、尊氏よりも天皇の仕打ちを恨めしく思ったと記された『梅松論』のエピソードが使われた。
- 逃げ上手の若君:高貴な顔立ちをした文武両道な皇子として足利尊氏と対決するが……
その他
- 大河ドラマ『太平記』:堤大二郎氏が熱演。尊氏を危険人物扱いしていたが、その大器を認めており、哀しい最期を迎えた。
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