健康な老後を過ごすためには、どんなことに気を付けたほうがいいか。理学療法士の上村理絵さんは、「日本は寝たきりになる高齢者が諸外国と比べて非常に多い。元気な肉体づくりをするためにウォーキングをしている人は多いが、これでは必要な筋肉は鍛えられず、寝たきり生活は防げない」という――。(第2回)

※本稿は、上村理絵『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)の一部を再編集したものです。

公園を歩く老夫婦
写真=iStock.com/mykeyruna
※写真はイメージです

日本は「寝たきり大国」

「肉体的な老化」の終着点が寝たきりです。

2020年の介護保険事業状況報告(厚生労働省)によると、施設に入所している寝たきりの方は300万人以上。自宅などで寝たきりになっている人を含めれば、その数はさらに増えるといわれています。

実は、このような国は珍しく、少し昔のデータにはなりますが、介護施設の利用者の80歳以上の寝たきり率は、介護制度が充実している北欧の国スウェーデンに比べ9.7倍、アメリカと比べても6.3倍。非常に高くなっています。

寝たきりになれば、人生を楽しめることが極端に減ってしまいます。

だからこそ、寝たきりになる人を1人でも多く減らすのと同時に、その期間をできるだけ短くしたいという思いを持って、私たちは活動をしています。

では、なぜ、日本では寝たきりの人がこれほど多いのでしょうか。それは寝たきりに対するあきらめの文化が根付いてしまっているからというのが、私の考えです。

「年が年だから、寝たきりになるのも、しようがないよね」

私たちの施設のご利用者やそのご家族ではなく、特にケアマネジャー(介護保険を導入した際、介護プランなどを立ててくれる専門家)から、こんな言葉をよく聞きます。

そこで、私は必ずこう言うのです。

「いや、いや、いや。そんなことはないですよ。90歳の方でも、ある程度の負荷をかけて、ちゃんとトレーニングをすれば、筋力は維持できますから、寝たきりになるとは限りません」

そもそも、寝たきりは病気ではありません。

ケガや病気がきっかけで寝たきりが始まることはあっても、寝たきりそのものは病気ではなく、あくまでも衰弱の1つの形態です。