「端っこ」とは、単なる両端のイレギュラーではない。それは、必然されど意図せず生み出される最高の特等席であり、選ばれし者のみが手にできる栄光である。
食べ物の「端っこ」は、真ん中とは一線を画す特異な美味しさを持っている。
カリッ、ザクッ! 焼き菓子やパンの耳は、熱に最もさらされ、その結果、他にはない香ばしい歯ごたえを獲得する。このカリカリ感こそ、端っこ好きの特権である。
濃厚な味わいの凝縮! カステラや羊羹の切れ端には、蜜や素材の風味がギュッと閉じ込められている。真ん中の上品さとは違う、力強い素朴な美味しさがある。
具材の氾濫! 巻き寿司や卵焼きの端っこは、具がはみ出さんばかりに詰まっている。この「不恰好だけどお得!」という豪快さが、心を躍らせる。
「端っこ」には、金銭的な価値を超えた、精神的な豊かさが詰まっている。
ひそやかなご褒美! 店頭に並ぶ「切れ端」「お徳用」の文字を見た時の、あの胸の高鳴り!最高品質のものを、こっそり安価に手に入れられる喜びは、何物にも代えがたい。
選ばれし者の特等席! 混雑する電車内でたまたま座席の「端っこ」をゲットできた時の、小さな勝利感!その場所が、あなたにとって最も落ち着くプライベート空間になるのである。
そして「端っこ」は、いつも私たちに安心と調和を与えてくれる。
集合写真で端に寄りがち、トイレの端の個室に入る、といった習性からもわかるように、人は「端っこ」に身を置くことで、世界と適度な距離を取り、静かな安心感を得る。
決して華々しい中心にはないが、中心もまた端っこがなければ成り立たない。世界を完成させるためには欠かせない存在。その謙虚な役割こそが、端っこの持つ最も奥ゆかしい魅力である。