映画化もされて有名になった、チェコ出身の作家ミラン・クンデラの小説『存在の耐えられない軽さ』が文... 映画化もされて有名になった、チェコ出身の作家ミラン・クンデラの小説『存在の耐えられない軽さ』が文庫になった(千野栄一訳、集英社文庫、1998年11月刊)。 この作品は一言でいうなら、「弱さ」とは何か?という問題をめぐる物語である。 常識的には、「弱さ」とは比較の問題である。10万馬力のアトムに対して、5万馬力のウランちゃんは弱い。それと同じような意味で、動物は人間より弱く、女は男より弱く、日本はアメリカより弱いのだと、ふつう人は考える。 だが「弱さ」とは、本当は能力の比較といった問題ではない。「弱い」存在、その「弱さ」そのものは、実は能力を判定する「公正な」比較の場には、決して姿を現すことがない、何かなのだ。「弱さ」とは、不可視なのである。 動物の能力は人間の設定した基準によって、女の力は男の設定した基準によって、非西欧文化の質は西欧文化の設定した基準によって測られて、はじめてその相対的な
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