アンブロケトゥス
あんぶろけとぅす
4800万年くらい前(新生代始新世)のパキスタン辺りに分布していた体長3mの動物。
ウシやカバに近いとされるクジラ類だが彼等はバリバリの肉食で、大物狙いはしないまでも魚や水辺に近づいた小型の哺乳類等を捕食していた。例えるならば「オオカワウソやワニに近い進化を遂げたカバ」とでもいうべきか。大体、アシカやトド位の大きさの動物とイメージすればいいだろう。
見た目通り水中で餌をとりながら水に近い陸上で暮らし、温暖な地域の河口、川岸、海岸付近にいたようだ。
全身骨格が見つかっており、立派な4本の足があるので「歩くクジラ」と名付けられたのだ。
上述のようにワニにも似ている哺乳類だが、当時の地球環境は極めて温暖で水辺の餌が豊富だったゆえに、ワニとは競争しながらも併存できたのだと思われる(現生のオオカワウソはアマゾン河周辺という温暖で豊かな環境のおかげで、ワニと併存できている)。始新世末期になって地球環境が急激に寒冷化して生息域が狭まったことで本種のような動物はワニに対し生存競争で不利になり滅んでしまったようである(ワニは変温動物であるため少ない餌でも生存できるが、哺乳類は体温を保つために大量の餌を必要とする)。
パキケトゥスよりもう少し進化していて、細長い体型が特徴的。
水掻きを持っているが水中では体を波打つように(上下に)動かして泳いでいたとされ、それが後に水掻きではなく尾びれで泳ぐルーツになったといわれている。四肢が完全に鰭になったプロトケトゥスはこのような動物から進化したと思われる(更に脚が貧弱化して遊泳と海生により適応したレミングトノケトゥス類を経ているとされる)。
ちなみにこの変な動物がクジラだとわかったのは、現在のクジラと同じで耳の骨が厚いという特徴から。
空中では音が聞こえないが振動そのものによって間接的に音を聞くことができ、水中ではその方が有利だったのである。
地上では鼻先を地面につけ、頭骨(あご)を伝う振動によって音を感じたらしい。