自衛隊
じえいたい
防衛省・自衛隊 創設70周年記念映像
自衛隊(じえいたい、英:Japan Self-Defence Force)は防衛省の実働部門である。日本最大の特別職の公務員組織であり、構成員となる自衛官は日本の国家公務員の4割を占めている。防衛省内部では「制服組」と通称され、その対比として中央官庁としての防衛省官僚組織は「背広組」と呼ばれている。
公務員組織、言い換えれば役所の一つだが、事実上の軍事組織でもある。誰が言ったか武装公務員。2021年グローバル・ファイヤーパワー誌による世界軍事力ランキングでの自衛隊評価は、米露中印に続く世界第5位にランクインしている。その前後でも世界トップ10圏内を堅持し続けているため、世界的な軍事組織の一つであることは疑いない。
自衛隊は陸海空の以下3組織によって構成されている。
昭和29年(西暦1954年)7月1日、同日に施行された自衛隊法に基づき、陸上を管轄する保安隊・海上を管轄する警備隊を改組し、併せて空を管轄する航空自衛隊を新設する形で設立された。2024年時点で創設70周年を迎えた歴史の長い組織でもある。
自衛隊の主な任務は「日本の防衛」。日本は群島国家であるため、領土と排他的経済水域の合計面積は世界10位と、世界有数の大きな広がりを持つ国である。その国土を自衛隊と、日米安保条約のもとアメリカ軍が役割分担して防衛している。
防衛以外の他の任務として、
これらが副次的な任務として位置づけられている。その中でも災害派遣は、阪神淡路大震災以降より自衛隊の任務として国民の間で広く認知されている。
「専守防衛」を標榜しているため、長らく海外での活動は控えられてきたが、最近では海外派遣も増えてきており、ソマリア沖の海賊対処活動やハイチPKO派遣等で活躍。さらに2020年代からは邦人救助のため、紛争地帯への派遣も行われるようになっている。
国内に多数の在日米軍基地を有し、同盟関係にあるアメリカ軍とは密接な関係にあり、国内外で協力しながら活動する機会が多い。2010年代以降はオーストラリア、インド、イギリス、イタリア、その他ヨーロッパ諸国や東南アジア諸国の軍事組織とも協力関係を結び、共同演習や物資共有の協定を結ぶなど、交流を広めている。
上記のように組織は大きく陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に分かれ、それぞれのトップとそれに従う支援組織には以下が存在する。
さらに、その上に制服組の最高位として統合幕僚長(統幕長)と、その補佐をする統合幕僚監部(統幕)が置かれている。
指揮系統は平時と有事で大きく変わる。
平時には陸海空の幕僚長と幕僚監部が指揮を執る。主な業務は各自衛隊の訓練や整備、補給など。このためこれらの組織をフォースプロバイダー(練度管理責任者)という。平時には統合幕僚長と統合幕僚監部は大臣や国家安全保障会議への助言・補佐を任務とする。
有事の際は最高指揮官である内閣総理大臣から防衛大臣を通じて統合幕僚長に全ての命令が下る。陸海空自の幕僚長は統幕に部隊を提供し、統幕長の指揮で部隊が活動する。このため統幕の組織をフォースユーザー(事態対処責任者)という。これによって例えば陸自の輸送を空自あるいは海自が行うといった連携をスムーズに行うことが、このような統合運用体制の狙いである。
戦力配置としては、かつて対ソビエト連邦の想定から北海道に陸自と空自が重点配置され、陸空自衛隊の部隊配置が手薄な沖縄は米軍が主力として駐留していた。しかし2010年代からは対中華人民共和国などへの想定もあり、九州・沖縄への陸空自衛隊の部隊配置が増やされるようになっている。
前身の警察予備隊・保安隊がアメリカ合衆国の占領下、アメリカ軍の補完として創設された経緯があり、自衛隊もまた上記のように日米安保条約のもと国内外で米軍と密接に協力しながら活動するため、組織の存在自体が米軍との連携を前提にしているという組織的・戦術的な制約がある。
陸海空三自衛隊の中で最も一体化の度合いが大きいのが空自。次いで海自、そして陸自と言う順であり、一体化の度合い≒政治的な枷の度合いとも見て取れる。しかし陸自も海外への国際貢献任務の増加に伴い、海外派遣を総括する旧中央即応集団の司令部は在日米陸軍司令部所在地である神奈川県の「キャンプ座間」に移転、事実上一体化した組織になりつつある。中央即応集団廃止後も、陸上総隊司令部日米共同部が設置されている。
自衛隊の戦略思想は基本的に「米軍本隊到着まで敵性勢力の侵攻を遅滞する事(=時間稼ぎ)」であり、自衛隊は米軍と一体化してはじめて完結した戦力として行動できる。その意味で「米軍基地は要らない、現状のままの自衛隊だけでよい」という主張はナンセンスと評してよい。しかし、日米両軍を統制する枠組みなど不明確となっている部分も多く、日米部隊の統合指揮がなされるのかどうかも不明である。
さらに政治的・法律的には、平和主義を規定した日本国憲法第九条とのジレンマを孕んでいる。活動には極めて多くの制約を課せられており、運用上の問題も多い。武力攻撃事態対処関連三法の立法、部隊行動基準(交戦規定)の制定といった有事想定の法整備も進んではいるが、上記のように日米両軍を統制する枠組みが決まっていないなど問題は多い。
防衛装備の製造について
自衛隊は自前で武器弾薬を製造する工場、いわゆる「工廠」を持たない軍事組織であり、自衛隊の使用する武器弾薬や戦闘機・戦車などの「防衛装備」は民間企業に委託して製造されている。これ自体は特に珍しいことでも無い(世界的に見ても、かつての工廠が民間に払い下げられたり第3セクター企業となることは多々ある)。
しかし、日本は長きに渡って武器輸出を原則禁じていたこともあって、兵器の開発製造を一手に担う軍事企業は存在しない。複数の企業が事業の一つとして兵器の生産を委託しているのが特徴であり、意外な企業が防衛産業に携わっていることも多い。例えば自衛隊の砲弾を製造しているのは空調メーカーのダイキンだったりする(戦時中まで砲弾製造が主で、砲弾の温度管理用の空調を作り始めたことで空調メーカーに参入した、という経緯はあるが)。
日本の高い技術力と工業力あればこそだが、問題も多い。防衛産業は平時は儲からない分野であることに加えて、海外に武器を輸出しないので市場原理や競争が起きず、新技術の開発などが積極的に行われないのである。それだけならまだしも、他に競争相手が居ないことから手を抜いた仕事をされたり、備品の製造を担当していた会社が業績の悪化等で引き上げてしまうなどの衰退が促されてしまうという無視出来ないデメリットも顕在化している。
そのため、現在は無理に国産化を図らず、海外からの輸入品なども積極的に活用するなどの方向転換も成されつつある。しかし輸出国との関係が万が一拗れ、禁輸措置でも取られた場合、第三国に頼るか自国で賄うかになってしまう。どちらを取るとしても一朝一夕でできる事ではなく、特に自国製造は民生品転用が多くなっている現代においても、ノウハウを失ってしまえば再開するのに多大な時間と労力を要し、安全保障の観点からかなりのリスクがある。
そのため外国産兵器でも技術蓄積のため高額なライセンス料を払う等、デメリットを承知で国内生産を続けているのが現状であり、いずれにせよ改善が促されている部分である。
ただし、兵器の部品に外国産のものを使用したりライセンス生産するのは自衛隊に限った話ではなく、他国でも盛んに行われている。例としてNATO(または冷戦時代の西側諸国)のような軍事同盟を結んでいる国家間など。日本は現状、輸出国との関係が崩れる自体は極めて低いためさほど問題でもない。さらに、兵器自体を他国から輸入することの方が大半の軍隊ではよくあることだ。
架空の自衛隊
- 戦略自衛隊:新世紀エヴァンゲリオンに登場する組織。略称は「戦自」、「JSSDF(Japan Strategy Self Defense Force)」
- 特務自衛隊:ガサラキに登場する海外派遣用に組織された第4の自衛隊で、派遣に応じて他の3隊から集められる。略称は「特自」、「JSSDF(Japan Special Self Defence Force)」
- 東宝自衛隊:ゴジラシリーズなど東宝の特撮・怪獣映画に登場する組織の総称。特生自衛隊などの本シリーズで登場する自衛隊が、架空のものが多く独自の装備を保有していることからこのように呼ばれるようになった。なお、東宝自衛隊という名称は公式には使われていない。
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