幸福度ランキングで常にトップの位置にいる北欧の人々は、薄暗く寒い冬の「気分の落ち込み」をどのように乗り越えているのか。ノルウェー・オスロ在住ライターの鐙麻樹さんは「日照時間の少ない冬の北欧では、日本ではあまりなじみのない対策で冬を乗り切っている」という――。

「世界一幸せな国」が抱える「冬季うつ」という悩み

北欧の暗い冬は、死活問題である。世界幸福度ランキングや福祉制度の充実度で常に上位常連の北欧諸国。では、この国に住めば誰もが幸せになれるかというと、そんなことはない。「北欧は自分に合っていない」と去る人だっているのだ。ただ、そうした人々がネットや公の場で理由を赤裸々に語ることは稀だろう。北欧で生活する上で困難を感じる大きな要因のひとつ、それは間違いなく「冬」だ。

雪が積もったオスロ
筆者撮影
雪が積もったオスロ。中心部なのでまだ街灯が多めで、これはかなり明るい。地方や人がいるエリアから離れるほど、どんどん暗闇となる。

北欧の冬は、長く、暗く、寒い。たとえ医師から「冬季うつ」という診断が下されていないとしても、「冬の気分の落ち込み」をできる限り避けるために、地元の人々はさまざまな対策を講じている。

フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンの『ムーミン谷の冬』を読んだことはあるだろうか。冬にひとりだけ冬眠から目覚めてしまったムーミンの話なのだが、読めば読むほど「ムーミン、冬季うつの症状出てるじゃん!」と突っ込みたくなるのである。自分に起きていることは「おかしい」ことではないのだと、なんだかほっとする1冊だ。

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そもそも、北欧に限らず欧州の冬は暗い。かつて筆者がより緯度の低いフランスに留学したときでさえ、大学に通おうと朝ドアを開けたら外が真っ暗であることにカルチャーショックを受けた記憶がある。この暗闇で何日も暮らしていると、自分が社会や他者とのつながりを失ったような、暗い世界で孤立している感覚に襲われるのだ。

欧州に住んでいなくとも、日本でこの冬の暗さ問題にぶつかっている人は多いはずだ。私たちはこの問題にもっとオープンになり、ひとりで抱え込まず、語り合う必要がある。