「歩く人」と「立ち止まる人」の立場が逆転した?
やっと「潮目が変わった」と言ってもいいかもしれない。「エスカレーター片側空け問題」のことである。そしてとうとう「逆転した」と言えるのではなかろうか。エスカレーターを歩く人と立ち止まって乗る人の「立場」が、である。
昨年、私は「エスカレーター片側空け問題」について寄稿した。ちょうど大阪・関西万博開幕の1年前のことだ。「エスカレーター片側空け問題」とは、もう数年以上前から、エスカレーターでは歩行しないこと、左右に立ち止まって乗ることというアナウンスがされてきたにもかかわらず、歩行する者が後を絶たず、そういった「歩く人のため」に片側を空けるという習慣が改められない問題である。
詳しくは記事〈エスカレーターの片側を歩く人はブロックしていい…医師が「片側空けはマナーではなく因習」と断ずる理由〉を参照されたい。
そこでは、この“因習”が大阪万博で試験的に導入される新型エスカレーターによって変わるのか、そもそもエスカレーターは、健常者が階段を歩くより早く移動したいときに使う装置ではなく、身体的事情などで階段を歩いて移動できない人たちが、健常者と同等の所要時間で階上(もしくは階下)に到達できるようにするための装置、すなわちバリアフリーの装置であるということを指摘し、エスカレーターを歩行する行為はこれらの人たちへの合理的配慮を欠いた行為であると述べた。
「右側ブロック」を1年間続けて感じた変化
そして鉄道各社が「歩行と片側空け」について、接触事故の原因だけでなく、身体の不自由な人をバリアフリー設備から排除する「迷惑行為」に該当することをハッキリ認識できるよう、もっと本腰を入れて繰り返しアナウンスすべきだと主張し、読者には、これらの迷惑行為に加担する片側空けを今すぐやめて、左右交互に立ち止まり「歩行者をブロックしよう」と呼びかけた。
そして当時から今日まで、私自身も「右側立ち」(私は首都圏在住である)を実践、エスカレーター利用者の行動を観察し続けてきた。すると、やはりはじめの半年くらいは私がつねに“立ち止まるファーストペンギン”であり、「歩きたいので通してください」と言われたり、舌打ちや大きなため息を背後から浴びせられたり、背後から体を押しつけられたりすることもたびたびあった。
その後、半年前からはブロック目的ではなく、私自身の身体的事情によって「右側立ち」せざるを得ない状況となったが、嫌がらせの傾向は大きく変化せず、頻度は非常に少ないながら心ない言葉や体当たりされたこともゼロではなかった。
そうこうしつつ、この1年間の全期間を通じて毎日欠かさず右側立ちで利用し続けることになったのであるが、この1カ月あまり、とくに5月初旬より実感しているのが、冒頭に述べた「潮目」と「立場」の変化だ(むろんこれはあくまで私の主観的なものである)。