僕が初めてバターのパワーを知ったのは、2004年、チベットのカイラス山に近く人里離れた地域の、海抜5580メートルの高地で出会った小柄な女性からだ。零下23℃の薄い空気で冷えきった体でゲストハウスによろよろと入っていったら、伝統的なヤクのバター茶、あのクリーミーな一杯をふるまわれて、生き返った心地になったのだ。 飲んでも飲んでも飽きなかった。僕の中のバイオハッカーが問いかけた。 「こんな空気が薄い場所なのに、これを飲んだらなぜ、とても元気になるんだ? テントで生活していて荷物は軽くすべき遊牧民族が、あえて重いブレンダーや手動の攪拌機を持ち運ぶのはどうして?」 これらの疑問は「完全無欠(ブレットプルーフ)コーヒー」のレシピ誕生に不可欠の要素になった。 帰国してから紅茶を淹れてバターと一緒にブレンダーにかけてみたが、それはただのあぶらぎった紅茶でしかなかった。チベットのお茶では何か別のことが起