屍人
しびと
屍人(しびと)とは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)が開発及び発売したプレイステーション2用のホラーゲーム「SIREN」シリーズに登場する不死の存在である。
「神」の一部となる過渡期の人間。
異界に取り込まれた羽生蛇村に溢れる赤い水を取り込み、人間が変異した不死身の化け物である。
変化のきっかけはいくつか種類があるようで、「体内に摂取した赤い水の量が一定を超える」か、「赤い水を取り込んだ状態で死亡した後、村に響くサイレン音を聞くことで屍人として蘇生する」かの2種類が確認されている。
しかしわずかにでも赤い水を取り込んでしまった場合、その時点で屍人となる運命からは逃れられない模様。竹内多聞は作中でその特性をヨモツヘグイの伝承になぞらえている。
作中に登場する屍人のほとんどは、元は羽生田村の住民である。
変異前の面影が残る半屍人と、異形の姿に変化した屍人の2種類が存在する。
屍人に変化していない者に対しては非常に攻撃的で、発見し次第、手にした道具を武器に襲いかかってくる。
ゾンビのようなフラフラとした挙動からも分かる通り、変化前の知性や理性は失われている。実際のゲーム内でも同じ行動を延々と繰り返したり、単純な陽動に引っかかるなど単純な様子がうかがえる。
一方で、銃を手に辺り警戒する個体や、釘やハンマーを手に粗雑ながら大規模な建築を行う個体など、何者かの意思を強く感じさせる行動が見られる場合も少なくない。
なお、銃持ちの屍人はゲーム内での凶悪な性能ゆえ、かなり悪名高い(後述)。
屍人の最大の特徴は、その不死性と再生力。
一定ダメージを与え、瀕死になるとうずくまってしばらく動かなくなる。通称シェル化とも呼ばれるこの状態の間、屍人は身体を硬化させて外からの衝撃を一切受け付けなくなると同時に、急速に身体のダメージを回復させている。一定の時間が経過すれば治癒が終わり、シェル化を解いた屍人は再び動き出せるようになる。
宮田司郎の行った解剖実験によれば、首の切断や身体をバラバラにするような解剖を行っても元通りに治癒してしまうなど、常軌を逸した再生能力が確認されたようだ。
このように個人レベルの武力、兵力では倒すことは不可能に近く、完全に滅ぼすには「神」の世界に由来する、とある力を使う必要がある。
また、人を襲う理由として、
- 屍人から見れば人間の方が化け物に見えており、恐怖により襲ってくるという説。屍人発生のきっかけと神と一体化する過渡期であることを考えれば、恐らく通常の人間は「己や同胞を食う外敵」と認識されていると思われる。
- 屍人には世界が素晴らしいものに見えており、この素晴らしさを分かち合うために人間を襲い、屍人化させようとする説。
という説があり、後者ならばものすごいありがた迷惑である。
屍人化には2つの段階があり、まず1回目のサイレンで半屍人と化し、2回目で「海送り」という赤い水の海へ入水する行動を取り、3回目で海から上がる「海還り」を経て完全な屍人となる。以降、海送りと海還りを繰り返し、様々な形態へと変化する。最終的に準備が整った屍人はそのまま赤い水へ溶けていき、神の一部となると言われている。
しかし志村晃一を始めとする一部の強靭な精神を持つ屍人は、完全に怪物と化すこと、赤い海に還ることを拒否し、まだ生きている人々を襲わないよう自らを拘束し、長きに亘ってサイレンや不死の苦痛と戦い続ける切ない話もある。
種類
- 半屍人
屍人化の最初の段階。まだ辛うじて人型を保っている。
体内には血液の代わりに赤い水が満たされており、目からは不要になった血液が絶えず流れている。海送り・海還りを経て、犬屍人、蜘蛛屍人、羽根屍人、頭脳屍人のいずれかに変化(進化?)する。
人間だった時の記憶がうっすらと残っており、独り言を呟いたり食事や家事のまねごとをしたり生前の行動を繰り返す者も多い。扉の開け閉めや鍵の施錠などを行えるほか、武器を持っている個体も多い。
場合によっては自分が化け物と化している事に気付かないまま家族の元へ行き拒絶され、そのショックで発狂、完全に変化という悲劇が起きることも。
- 猟銃屍人
半屍人のうち、狙撃銃を装備している個体の通称(オフィシャルな呼称ではない)。
射撃の腕前が異常なまでに正確なことで有名。
本作の狙撃銃はエイムさえ合っていれば必ず命中する仕様のため、CPUである屍人が使うと長射程かつ必中のぶっ壊れ武器と化す。さすがに威力や射程はプレイヤーが使うものより低く設定されているが、それでも1発喰らえば瀕死である。
さらに高台や狭い通路など理想的な立ち位置に陣取っているうえ視認距離もやたら長いため、不意に見つかると逃げ切るのは困難。おまけに、弾数は無限(流石にリロードはするが)。
プレイヤー間ではゴルゴ屍人ともあだ名されて恐れられており、SIRENの「どうあがいても絶望」な難易度の一因となっている。
ただなまじ良い狙撃ポイントを取っているだけに、視界ジャックによってプレイヤーの『眼』として利用されることもある。
リブート版コミックでもその能力は健在であり、音を立てた小さなネズミを、一撃で正確に撃ち抜いている。
「田舎の小さな村で、なぜこれほど銃が使われているのか」という事が疑問視されることがあるが、
その理由として旧日本軍が屍人の不死性を軍事転用しようと目論み、改築した旧宮田医院を拠点として秘密裏の研究を行っていたという裏設定が関係している。
この病院に持ち込まれ、戦後の混乱で忘れられたまま没収を免れた日本軍の小銃や弾薬が、宮田医院ごと異界に飲み込まれて屍人間に流出していたようだ。
また羽生蛇村自体、山あいという立地から志村家のように猟師として生計を立てる住民が多かった模様。そのため屍人にも銃の扱いに秀でた元村人が多数おり、作中での登場数の多さにつながっていると言われている。
- 頭脳屍人
半屍人が変異した姿の一つで、後述の犬、蜘蛛、羽根を制御する司令塔の屍人。
姿は人間のそれに近いが、頭部はナマコやフジツボなどの海洋生物が付着した特徴的な形をしている。そのグロテスクな姿にショックを受けたプレイヤーも多いのか、みんなのトラウマ入りを果たしている。
戦闘には長けておらず、人間を見ると逃げ出してしまう…という設定だが、ネームドの頭脳屍人は全員例外なく好戦的である。
設定からも分かるように、頭脳屍人を倒せばその近辺にいる犬、蜘蛛、羽根の屍人もまとめて行動不能になる。
作中では公式の呼称として「ブレイン」とルビが振ってあるが、プレイヤー間ではいまいち浸透しておらず、そのまま「頭脳屍人」と呼ぶ人が多い。
- 犬屍人
半屍人が変異した姿の一つで、女性だけが変化する形態。
常に四つん這いで、頭に角のようなものが生えている。
前足(手)から攻撃力の高い打撃を繰り出してくる。リーチは短いのでタイマンなら避けやすい。
平地だと移動が速いだけといった感じだが、高いジャンプ力で段差を登れるため入り組んだ地形だと脅威になる。
音に敏感だが視力はやや弱い。
人間としての自我や知性は完全に失われており、ドアを開けることすら出来ないため、室内に閉じ込めることが可能。屋内ステージで出てくることはあまりないが。
- 蜘蛛屍人
半屍人が変異した姿の一つで、男性だけが変化する形態。
四つん這いで頭が上を向いているため、一見するとブリッジのような姿勢をしているように見えるが、実は首がねじ曲がっている。さらに頭頂部には蜘蛛の複眼を思わせる目がついており、ここでプレイヤーを視認する。
天井や壁を伝ってプレイヤーの死角から攻撃できる。
視野は広いが見える距離は短い。天井に貼りついている蜘蛛はライトを消してしゃがめばやりすごせる。
音に対して非常に敏感であるため、閉所では慎重な移動が強いられる。一方で移動が遅めなので広い場所であれば走り抜けてスルーすることも可能。
また復活がわずか8秒と非常に早い(一部ステージでは例外あり)。屋内ステージで出てくることがほとんどなので、(犬屍人と同じく)ドアを開けることができない点を生かして隔離するのが基本の対策となる。
- 羽根屍人
半屍人が変異した姿の一つ。
昆虫の顎がついた顔や、甲殻類がそのまま下顎についたような顔をもち、トンボのような4枚2対の羽根を背に持つ屍人。
猟銃屍人の強化個体というべき存在で、例外なく拳銃または狙撃銃を所持しているのが特徴。電柱や高木の上に留まり、あるいは空中を飛び回って空中からプレイヤーを探知、攻撃を仕掛けてくる。
空中にいるので視野が非常に広く、こちらからは近接武器が届かず銃がないと倒せない強敵。攻撃精度も高い。
人間の死体に「屍霊(しりょう)」がとりついた存在。屍霊は光に弱いため人間の死体をシェルター代わりに利用しており、屍人も屍霊が利用する死体を増やす為に人間を攻撃する。
一定のダメージを与えると屍霊が身体から抜け出し無力化できるが、しばらくすると新しい屍霊が入って復活するためこちらも倒すことは不可能。ただし、前作の屍人ほどの不死性は無い為、(設定上は)爆弾などで肉体を完全破壊して滅する事も可能。
知能は人間より劣るとされるが、中には視界ジャックを駆使して特定の人間を執拗に追跡する個体、車を運転する個体、挙句の果てには屍人同士で恋愛し、部下に指示を出す個体など、前作より賢い個体もいる。ごく稀に異様な俊足を誇る個体もいる。
武器を持たない個体の攻撃手段は噛みつき。相変わらず狙撃屍人も登場しており射撃精度も上がっているが、本作では屍人から武器を奪えるようになったので、武器を奪ったうえであえて打撃武器を拾わせる事で弱体化させる事も可能になった。
「闇人」とは源を同じくしながらも敵対しており、ゲーム後半では彼らとの生存競争に敗れて登場しなくなってしまう。作中でも屍人と闇人が争う場面があるシナリオや、屍人を操作して闇人と戦うシナリオが存在する。また、ゲーム前半で屍人だった死体がゲーム後半では闇霊にとりつかれて闇人になっているというシチュエーションもある。
ほぼSIRENの屍人と変わらないが、いくつかの変更点が見られる。
NT屍人の知能は異常に高く、屍人同士で会話も行う。こちらもSIREN2の屍人同様、倒すと武器を奪うことが出来る(その代わり本作では、武器を一つしか持てない)。
- 蜘蛛屍人
男性だけでなく女性も存在するようになった(犬屍人は登場しない)。四肢が捻じれ、胸部が盛り上がりグロテスクさが増した。
犬屍人が登場しないので壁を登るだけではなく、屋根まで登る様になりもの凄い速さで急接近するようになった。
- 羽根屍人
羽根は背中からではなく、頭頂部と眼球から生えているほか、長い舌を持つ。男性限定でよく見ると後頭部に悲しげな顔が浮き出ている。
銃による攻撃だけでなく、プレイヤーを掴んで空中へ連れてゆくなど攻撃のバリエーションが増えた。改造散弾銃を持たせると脅威性が格段に増すので、間違っても持たせてはいけない。
- 怪力屍人
犬屍人が登場しなくなった代わりに、新規に追加された屍人。コロネのような大きく白い肉体と、不釣り合いなほど細い手足が特徴。海外版での名称は「Maggot(蛆虫) Shibito」。元ネタは蚕の幼虫とのこと。
ゲーム中では中ボスに近い形で登場することが多い。その名の通り恐ろしい怪力であり、捕まると即死する羽目になる。正攻法ではまず倒せないほどの耐久力を誇り、倒せたとしても秒で復活する。ちなみに扉の開閉も出来る。
- 頭脳屍人
NTの屍人のモチーフが一貫して「虫」になったため、海産物ではなく虫のような頭部を有する。中にはただの肉塊にしか見えない者や顔だけが肥大化した者など、より特徴的な個体も存在する。
- 屍猫
どこでもいっしょのシリーズ作品、まいにちいっしょのトロ・ステーション(2008年7月7日の第609回)にて、同年同月に販売されるSIREN NTを紹介した際に出てくる、屍人の一種…という設定。
その名の通り、猫が赤い水の影響で屍人のようになった姿。読み方は「しにゃんこ」。
ちなみにここでの屍人も、親切心から仲間にしようとしているという説が採用されており、井上トロとクロも同様の解説をしている。
本編ではゲームの解説終盤、実はここは羽生蛇村であり、トロとテレビさんは既に屍猫化していたことが判明する。なおこの時のトロは顔色が悪く(というか青く)なっており、テレビさんは登場時から赤かった。
そしてクロは2人に襲われ…というところで目が覚めた。ある意味SIREN2の三沢岳明と同様、悪夢であり現実ではなかったことに安堵しつつ、その後はSIREN NTのメイキングを紹介した。
紹介終了後、これで終わりかと思いきや…再びクロは羽生蛇村に居ることに気がつく。当初はまた夢だと考えるが、そこで何故か「壊れた扇風機」というアイテムを入手する。
それをトロ達に報告するが…2人は不気味な笑い声をあげ、クロはその光景を見て助けを求めて叫ぶ…ところで終わりとなる。
…と、ここまではトロ・ステーション内での一発ネタに過ぎなかったのだが、それから10年後の2018年に「SIREN(15周年記念)」と「どこでもいっしょ」のコラボとして、なんと立体化した。
- シビトロ
こちらは厳密には屍猫ではなく屍人という扱いであり、あくまでトロが屍人化した姿。トロの夢は人間になる事であったが、もしかすると人間化してしまったが故に、屍猫ではなく屍人になってしまったのかもしれない…だとしたら悲惨過ぎるが。
フィギュアの方は、姿としては一見するとトロの姿だが、皮膚はひび割れ、赤黒い歯茎が剥き出し、眼孔は深い闇という姿であり、特に歯は完全に人間寄りになっている。
別の立体物だと鎌を武器として装備しているが、目の焦点は合っていない。なおこちらだとクロも屍人化している。
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