YF-23
わいえふとぅえんてぃすりー
ノースロップとマクドネル・ダグラス(いずれも当時。現在は前者はノースロップ・グラマン、後者はボーイング)が共同で開発した試作ステルス戦闘機(第5世代ジェット戦闘機)。
愛称は「ブラック・ウィドウⅡ(Black Widow Ⅱ(クロゴケグモ))」で、第2次世界大戦時にノースロップ社が開発した夜間戦闘機P-61ブラックウィドウがその名の由来である。
アメリカ空軍が1980年代から1990年代にかけ、ソビエト連邦(当時)のSu-27等に対抗するべくF-15の後継機を選定するため実施した先進戦術戦闘機計画(Advanced Tactical Fighter、ATF計画)において提案され、ロッキード及びボーイングが開発したYF-22と採用を賭け争った。
2機が製造されており、試作各機体の愛称はPAV-1(黒に近い灰色)が「グレイゴースト(Gray Ghost)」、PAV-2(灰色)が「スパイダー(Spider)」。前脚ドアの内側に愛称が書かれている。
ステルス性を最も重視して設計されており、水平尾翼は持たず、主翼は前後対称の菱形翼を、尾翼は全動式V字型尾翼が採用されている。このV字型尾翼を稼働させることでヨー制御・ピッチ制御を行う他、90度回転させることでエアブレーキとしても機能させることが出来るなど、やや保守的だったYF-22と比べて技術的先進性を前面に押し出した設計となった。
主翼は輸送の際に邪魔にならないよう分解可能となっており、PAV-2は両翼が外された状態で道路で牽引による陸上輸送がされたことがある(YF-22やPAK-FAのように輸送機への搭載が可能かは不明)。
B-2爆撃機に似た排気ノズルは推力偏向機能は持たないが、地上からの熱探知を困難にする効果を持っている。
ATF計画ではエンジンも競作されることになっていたため、それぞれの機体に異なるエンジンが搭載されており、PAV-1にはプラット&ホイットニー(Pratt & Whitney)製のYF119-PW-100が、PAV-2にはゼネラル・エレクトリック(General Electric)製のYF120-GE-100が搭載された。
機首から胴体にかけて二枚の扉が繋がったウェポンベイはYF-22に比べて大型で様々な兵器が搭載でき、機外搭載用の大型兵器もウェポンベイ内に格納できる利点があった。
しかしながら兵器運用能力は試験内容に含まれて居なかった事もあり、試作品の為にベイの位置は仮のものとなっていた。また、当時の要求仕様から対地攻撃能力は考慮されなかった。
一方でその形状ゆえにウェポンベイドアの縁の一部は危険な突起となっており、PAV-1は機体色の関係もあり安全の為に赤いマークが付けられた。このマークはウェポンベイ閉鎖時には砂時計状の模様となる。
黒い身体の腹部に赤い模様を持った独特の配色はまさにブラックウィドウ(クロゴケグモ)さながらである。
結局ATF計画では選定の末、YF-22が選定された事により量産には到らなかった。詳細な結果は公表されていないものの、YF-22と比べてステルス性や高速飛行性能・燃料搭載量で優位だったといわれるが、米空軍は生産面や整備性・汎用性、機動性・操作性で優れていたとされるYF-22を選定した(他にも米空軍が採用したYF119-PW-100は推力で劣る面があったため、保守的ながらより小型で自重も軽いYF-22を選んだとも言われている)。
計画終了後にNASA(アメリカ航空宇宙局)に移管されるも1996年に保管終了。現在はPAV-1はアメリカ空軍博物館に、PAV-2は西部航空博物館に展示されている。PAV-1は一時期かなり機体の状態が悪化していたが、後に大規模な修繕作業が行われた。PAV-2は屋外展示ではあるものの、こちらも状態は良好。
なお、対抗馬のF-22と同様に、艦上戦闘機型の「YF-23N」が計画されていた。こちらでは航空母艦運用に必要な各種装備(降着装置の強化や主翼折り畳み機能の追加)を追加した他、設計面でも主翼を後方に移しカナード翼を採用するよう変更が加えられている。
こちらはアメリカ海軍がF-14Dの後継として進めていた海軍先進戦術戦闘機計画(Naval Advanced Tactical Fighter、NATF計画)に提案されていたものの、ATF計画の採用機をベースとする予定だったため、こちらもYF-22の艦上戦闘機型であるYF-22Nが選定されたためこちらもボツとなった。
もっともNATF計画自体、冷戦終結による予算削減等で中止になってしまったのだが...(そのため海軍はF-14の後継としてはF/A-18E/Fを充てることとなり、本格的なステルス戦闘機の導入はF-35Cに持ち越しとなった)。
また、アメリカ空軍向けのステルス戦闘爆撃機(暫定爆撃プラットフォーム)として、F-22をベースとしたFB-22が計画されたことに伴い、YF-23も同様に改造案を提出しており、F-22をベースにするより安価で済む等の利点を主張していた。
しかし、暫定爆撃プラットフォーム機の開発計画そのものが実質中止になった為、YF-23が復活する可能性は消えてしまった。
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