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猟奇殺人の犯人は、統計的には、白人男性、出身は下級中産階級、20-30代で、精神的・肉体的虐待を幼少期に受けている。
幼少期に、放火、過度の動物虐待、夜尿症がみられる。
脳の一部に何らかの障害があるが、大部分は、IQが高い。
警察などの権威に憧れを持つが、警官になれずに警備員や兵士になる。
犯行は冷静で手が込んでいるが、逮捕後、精神障害を主張する。
世界人口の5%のアメリカが連続殺人の75%を占める。アメリカという社会の何が問題なのか?
18世紀の法学者ベッカリアによって犯罪学古典理論が確立された後、様々な学者達が犯罪行動に焦点を当てた。自由意志、絶対的決定論、遺伝論、貧困といった原因が指摘されそれぞれの時代に脚光を浴び、廃れていったものも多い。
19世紀イタリアの医者、ロンブローゾは、数千人に及ぶ兵士、精神病患者、受刑者等の人体測定や死後解剖を行い、犯罪者は身体的特徴と精神的特性において正常人と区別された特殊な人間であり、隔世遺伝・先祖帰りによって原始人として生まれるため現代文明社会のルールや期待に不可避的に対立せざるを得ないとした(「犯罪人」1876)。しかしそうした異常性は存在しないとするゴーリングなどの批判で生来性犯罪人説は過去のものとなった。
1930年代シカゴ大学の研究者の間でシカゴ学派といわれる社会環境学的研究法が発達した。そこで主張されたのは、犯罪者は社会的状況によって犯罪を学習するか、犯罪を犯すよう強制されているというものだった。彼らが「精神薄弱」や「無意識」という言葉を使って現実から逃避しようとしなかったことは評価すべき功績であろう。
犯罪者・犯罪人という特別の人間は存在しないとすれば、猟奇的な殺人は犯人を作り出した社会環境こそが問題ということになる。現実に犯罪行為を行った者を経験的・実証的な研究の対象にすることによって、犯罪行為と結びつきやすい要因を探る必要がある。
心理学の専門家によれば、「何より先に暴力に訴えることは、脳の大脳辺縁系か前頭葉に微細な損傷」が原因であることをCTスキャンで確認できるという「ジョエル・ノリス (シリアルキラー)p44」。他にも著者は栄養失調、不安定な家庭環境、亜鉛やカリウム不足によるホルモンバランス、鉛・コバルトなどの環境汚染物質、動物の虐待などが暴力的傾向を助長するとしてしている。
ただ「認識が対象を決定する」という言葉の通り、人間の頭脳は自らの認識によって対象を再構築してしまう。つまり、社会的に悪とされている事象を目の前の現象に当てはめてしまうのだ。母親の売春、虐待、同性愛、アルコール依存症、果ては環境汚染物質や栄養失調に至るまで、原因として挙げられている事柄は、アメリカの社会問題の面と、キリスト教的な悪徳の側面とがある。いわば自らが問題だと思っている現象を、猟奇殺人の原因として勝手に措定しているとはいえないだろうか?
第三世界での子供はさらに不幸な状況にあるにもかかわらず、猟奇殺人犯にはならない。
プロファイルは、メテスキー(Mad
BomberGeorge Metesky)が19年も(1940-57年)30回にわった爆弾を仕掛けたにも関わらず捕まらなかったため、精神科医ブラッセル博士(James
Brussel)が犯人のプロファイルを作成したことが起源となった。逮捕時にダブルの背広を着ていることまで予言し、見事的中したことから脚光を浴びることになる。
ただ、ニューヨーク市警の課長ジェバース(V.Geberth)は「プロファイルによって解決された事件はひとつもない(Practical
homicide investigation: Boca Raton,FL:CRC 1993)」と述べており、学問としての確立はいまだ遠いといって良いだろう。
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