「異性愛者でいること」に疲れ果てた女性たちが、いま静かに口にし始めている言葉がある。 ヘテロフェイタリズム(heterofatalism)──直訳すれば「異性愛の宿命論」。 これは、異性愛の女性が男性との恋愛に望みを持ちつつも、関係の進展や感情的充足が得られず、結局そうなるとわかっていながら、なおも惹かれてしまうという諦念や矛盾、絶望を表す言葉だ。 この「欲望と失望のループ」の概念を提唱したのは、英オックスフォード大学の研究者アーサ・セレシンで、彼によれば、現代の異性愛関係は「失望が前提」とされているという。 現代のこうした異性愛の摩擦をパートナーシップの「退廃」として片付けることは簡単だ。しかし、その背景には、長年にわたり女性たちが抱えてきた失望の蓄積がある。