セーラー服
せーらーふく
トップスにセーラー服を着たキャラクターのイラストに付けられるタグ。
その独特な形状と大きさの襟はセーラーカラーと呼ばれる。
現代では日本を中心とした東アジア地域における女子学生の制服として知られているが、一般の女性や子供の洒落着(マリンルック及びマリンセーラー)として着られることもある。
発祥には諸説あるが、元々はイギリスで誕生し19世紀中頃から採用されていった船乗り・水兵(Sailor)用の制服(甲板服)であり、実際に日本に入ってきたのも海軍経由である。
現在でも世界各国の水兵服装として洋の東西を問わず着用され続けている。海上自衛隊では階級が海士長以下の隊員の男性用制服がセーラー服であり、「本職の提督候補生が艦これアーケードをプレイしに来た」ことで一時期話題になった。
学生服としては日本で独自に発達したため、世界的にもセーラー服とスカートの組み合わせは日本を代表する制服と見られることが多い。
日本統治時代があった韓国や台湾では、現在もセーラー服の学校が一部にある。
中国では従来のジャージタイプの制服の悪評を受けてブレザータイプに変更した学校が多いが、一部でセーラー服を採用した学校もある。その影響で日本の制服が新鮮でかわいいと話題になり、結果ファッション着としての需要が高くなっている。
各部は機能的な造りになっており、大きく逆三角形(∀形)に開いた胸元は海へ転落した際に水分を含んで重くなった服を破いて泳ぎやすくするため、胸元に結ばれたスカーフも元々はタオル代わりに汗をぬぐうためのものであったという。
また背中の肩甲骨を覆うほど広い襟の部分は、本来上図のように襟を立てて遠くの船から発せられる声を聞きやすくするためのものという説がある。他にも髪で服が傷まないようにするための「汚れ(フケ)よけ」説などがあるが、無論これらは「水兵の制服」としてのセーラー服が持っていたとされる機能である。
襟元の形態によってさまざまな種類があり、胸元にあるV字の開きが小さいのが関東襟、逆に大きいのが関西襟と呼ばれている。もちろん胸を隠すための胸当てが付いているので、大きいからといってエッチになるわけじゃない。
例として、
と言えば分かりやすいだろうか?
他にも札幌襟、名古屋襟など亜種が存在し、胸当てがなかったり襟カバーがついていたりする。
なお襟が逆三角形型に開かないものや角襟になる亜種もセーラー服の誕生当初から存在していた。ただ現状として実際に採用されている学校はない。
上着は軍服のそれを踏襲してはいるものの、スカーフが女子好みの色になっていたりスカーフの代わりにネクタイ・リボンタイ・紐タイが採用されていたりする場合や、セーラーカラーのみの場合もある。
またボトムスは基本的にズボンではなくスカートであり、主にプリーツスカートが採用されている。近年では徐々にファッション性を取り入れたデザインのセーラー服も見受けられるようになった。
なお冬服・夏服両方がセーラー服の学校と、夏服だけがブラウスの学校があるようだ。夏服のブラウスがセーラーカラーである場合も。
前史
そもそも当時のイギリス海軍には水兵向けの統一された軍服がなく、船舶ごとに様々な甲板服が着られていた(ブレザーもその一つ)。それらに見受けられた特徴をヴィクトリア女王妻夫が抜き出し子供(後のエドワード7世)に着せたことで、上流階級を中心にセーラーカラーの子供服や婦人服が流行していき、その流れで1857年から正式に海軍の制服として採用されることになった。
更に当時大英帝国の影響力は絶大であったため、これに倣って各国で軍服制定の動きや子供服などの流行の流れが起き、結果として世界中へ広まっていったのである。これは20世紀初頭にかけて続いていった(火垂るの墓で節子がセーラー服を身に纏っているのもそういうことだ)。
日本海軍(大日本帝国海軍)には1872年(明治4年)の設立当初から制定されている。
まとめると「甲板服(原始)⇒子供服(エドワード)⇒水兵服/子供服・婦人服(英国から世界へ)⇒学生服」といった経緯をたどっており、元々誕生当初から軍服のような制服としての役割と女性・子供向けのファッション着としての性質を両方兼ね備えていたといえる。
戦前
女子の洋服の制服としては明治時代からごく一部でドレスを採用した学校もあったが不評で、大半の女学校では振袖に袴着用であった。
日本に初めて学校制服としてセーラー服を採用したのは諸説あり、一説によると1920年(大正9年)の京都の平安女学院と言われるが、これはワンピースタイプで一般的なスタイルとは異なる(現在同校の制服はブレザーに変わっている)。
のちに一般化したツーピースタイプを最初に採用したのは、翌大正10年の福岡女学院であった(同校は現在でも当時と同じスタイルの制服を採用し続けている)。
当時としてはとてもモダンなセーラー服は好評をもって迎えられ、瞬く間に普及した。セーラー服が採用された理由としては、男子学生の学ランが陸軍の軍服を元にしたものだったのに対応して「では女子は海軍の軍服にしよう」という発想があったとされる。
昭和初期にはセーラー服は女学生を象徴するものとしてすっかり定着するが、当時は洋服の既製品がない時代であり仕立屋に頼むのは高くつくため、洋裁の心得のある母が娘のためにセーラー服を拵えたり、上級生が洋裁の勉強をかねて下級生の為に作ったりする場合もあったという。
戦後
戦後(新制)中学校が義務教育として発足した際、多くの中学校が(旧制)中学校と女学校にならい制服を詰襟の学ランとセーラー服と定めた。戦前の女学校は進学者が限られており、セーラー服は比較的ゆとりのある階層の子女が着るものだったのだが、これにより一気にセーラー服が大衆化したわけである。
昭和20年代にはナイロンやポリエステルのような化繊による既製品のセーラー服が出回り始め、戦前には高額だったセーラー服が普及価格帯になってきたこともセーラー服普及の追い風となった。
こうして戦後昭和の時代にはすっかり女子中高生用制服として定着したのである。
ツッパリ世代
1980年代の校内暴力が社会問題化していた時期に、いわゆるスケバンなどの不良生徒が踝までを覆うほどの長さを持つ改造スカートを履いていたことから、セーラー服のイメージが悪化。
着崩すことが難しい制服として、ブレザーとチェックのスカートの組み合わせへと変更する学校が出始めた。
チェックのスカートは丈を延ばすとまるで安手のカーテンのようになり格好が悪いため改造する者が激減し、「どうせ行くならかわいい制服の学校に」という女子が制服を変えた学校に集まったことで結果的に偏差値が上がり問題の多い生徒が減るなどの効果があったため、1980年代後半から1990年代にかけて特に郊外や地方都市の私立高校を中心に制服をブレザーに変更する学校が続出した。
現代
近年では制服のスタイルが多様化しており、伝統的なセーラー服スタイルの学校は減っている。他のスタイルとの折衷で「夏服のみ洗濯が効きやすい生地のセーラー服にする」「セーラーブラウスのブレザー」「セーラーブレザー」というデザインの学校もある。
2010年代以降になると学生服にもジェンダーレス化の潮流が現れる。そうした流れの中でセーラー服からスラックスタイプを選べるブレザー服に移行する学校が現れ、「セーラー服は将来的に消滅するのではないか」という議論さえ聞かれるようになった。
ただ2020年代半ばに登場から約100年を迎えたセーラー服は、公立中学校で広く廃止される傾向がある一方、高校では相対的に見て強い存続力を見せている。
また新たにセーラー服を導入する高校も依然として見られる(ほぼ常にリボンタイプ)。
こうして存在の二世紀目に入ったセーラー服は伝統を守る名門校、お嬢様学校のシンボルとしてのイメージが強くなる一方、再び女子高生の専売特許という原点に立ち戻りつつある。
現実世界では主流でなくなってきたセーラー服だが、制服として完成形にあるが故にサブカル界隈では根強い人気があり、オタク文化系ではフィクションの『学園もの』の影響で学ランとセットで人気の萌え属性の一つとなっている。
またしばしばコスプレの題材になっており、例えば上服とスカートからの腹チラなどのチラリズムなどと相性が良く、黒ストッキング、ニーソックス、エプロン、日本刀などのアイテムや、活発な女の子やおしとやかなお嬢さんなど色んなキャラに合ったりと、特定の層にとってフェチシズムを刺激するものなのである。
他にもゆめかわいい雑貨などで「乙女」の象徴として使われていることもある。
このようにファッション面で注目されるのは、ある意味セーラー服誕生当初への先祖返りといえよう。
要するにセーラー服っていいよね。
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