生きていくために、1度入ったら抜けられない闇バイトに手を染め、裏社会に身を落として日々、あがく3人の若者の3日間を描いた、西尾潤氏のデビュー作の実写化作品だ。SNSで女性を装い、身寄りのない男から個人情報を引き出しての戸籍売買、裏社会での運び屋、臓器売買…。社会問題化している闇ビジネスを、生々しく描くシーンは目を引くが、この作品が描きたいのは、彼らにもそう生きねばならぬ事情はあり、普通の若者としての感覚もあれば日常もあり、現状から抜け出したい思いもある、ということだろう。

北村匠海が演じた犯罪組織の手先として戸籍を売買するタクヤと、林裕太が演じた弟分のマモルの先輩・後輩を超えた兄弟のような関係性が絶妙だ。13日に都内で行われた公開直前イベントで、林が「タクヤがいたからこそ、マモルは人の愛情、優しさ、悲しさを知ることができた」と言えば、北村は「その(タクヤの)魅力は、裕太がマモルを演じたからこそ表現できたことでもある」と林に感謝。「1番、人間くさい泥水の中を平泳ぎしているような先輩もいて3人でやれたからこそ関係性、思いが芽生えた」と、兄貴分の梶谷役の綾野剛を含めた3人のリアルな関係性が、演技に反映されたと強調した。

矢本悠馬、木南晴夏、山下美月ら、脇を固める俳優陣も光るが、中でも日本映画界で独特の存在感を発揮する松浦祐也が、この作品でもいい味を見せている。生活困窮から戸籍を売る男をルックスから、らしく演じているが、最後に良い意味で覆される。松浦の芝居を見てきた人であれば、喜びを覚えるだろう。【村上幸将】

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