ウクライナの多数の子どもたちを違法に連れ去ったとして、ロシアの大統領ウラジーミル・プーチン(73)と子どもの権利担当大統領全権代表マリア・リヴォワ=ベロワ(40)に対し、国際刑事裁判所(ICC)は2023年3月に戦争犯罪の容疑で逮捕状を発付した。この事実からもうかがえるように、ウウライナ占領地での未成年者に対する抑圧や人権侵害は、極めて深刻な状態である。実情にはいまだ謎が多いものの、ロシア当局は子どもたちを保護者から引き離し、ロシアやウクライナ占領地の200カ所以上に置かれた施設で愛国教育や軍事訓練を施し、ロシアに忠実な兵士として養成さえしている様子が、ウクライナの人権団体や欧米の研究者らの手で、最近次第に明らかになってきた。
この課題に取り組むウクライナの大手慈善基金「セーブ・ウクライナ」は、一例として、ロシア占領地出身のウクライナ人少年が、千島列島の占守(シュムシュ)島で軍事訓練を受けているとする動画を公表した。千島列島北東端にあたる占守島は、ロシアが実効支配をしているが、日本政府の公式見解では今なお帰属未定となっている。
占守島に3週間滞在か
この動画では、緑に包まれた丘を背景に、軍服に身を包んだ少年が語りかける。
「ヘルソン州と私の軍事スポーツ訓練『戦士』センターに、歴史的に重要な占守島から温かい挨拶を送りたい」
「ここは第2次世界大戦が終わった場所です。クリル(千島)列島上陸作戦が実行され、それが戦争を終結に導いたのです」
「セーブ・ウクライナ」によると、この少年はコルニー・アンドロニコフ(18)で、ウクライナ南部ヘルソン州に暮らしていた。旧ソ連で普及している格闘技「サンボ」を幼少時から習い、ウクライナ国内の大会で入賞した経験も持つ。2021年に地元ヘルソン州の試合に出場した記録が、ウクライナ側に残っているという。
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