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「サナエノミクス実行内閣」スタート地点の市場環境は「大混乱シナリオ」を遠ざけている:滝田洋一 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
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「サナエノミクス実行内閣」スタート地点の市場環境は「大混乱シナリオ」を遠ざけている

執筆者:滝田洋一 2025年10月22日
タグ: 高市早苗 日本
エリア: アジア
AI関連投資は日本でも成長の原動力となりつつある[初閣議を終え、記念撮影する高市首相(前列中央)と閣僚ら=2025年10月21日、首相官邸](C)時事
「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗内閣が発足した。日本版「トラス・ショック」を懸念する向きもあるものの、中国が売却した米国債を買い増しで引き受け、割高な米国株からの資金分散先にもなっている日本に、少なくとも現時点で「売り」は考えにくい。もちろん、それはトランプ政権が為替・債券市場に目を光らせ、日本に “責任”を強く求めることの裏返しだ。円の先安観に対処が必要な片山財務相、石破政権下で約束した80兆円対米投資の尻ぬぐいさせられる赤沢経産相など、経済閣僚には対米関係を睨みつつ日本経済の舵取りを担う困難な作業が待ち受ける。

 政権発足初日からフルスロットルの発進である。片山さつき財務相には日本版DOGEというべき「租税特別措置補助金見直し担当大臣」を兼任させ、厚生労働相には「労働時間の規制緩和検討」を指示。法務相には「不法滞在対策の強化と出入国の管理徹底」を求めた。国家安全保障担当の首相補佐官には尾上定正元空将を起用し、さっそく藤田文武日本維新の会共同代表が「素晴らしい人事」と呼応する。

 石破茂政権が残した負の遺産というべき日米関税交渉については、尻拭いの意味合いも兼ねてだろう。赤沢亮正経済財政・再生相を経済産業相に横滑りさせる。「おめでとう!」「ワンダフル!」とハワード・ラトニック米商務長官からはさっそく電話が入る。「ラトちゃん、やさし」と喜べるかどうかは別として、赤沢氏が人質にとられたことで、石破前首相は通商問題で新政権を批判できなくなる。

『世界を揺るがした10日間』。1917年のロシア十月革命を活写した、米国人ジャーナリスト、ジョン・リードのルポルタージュである。その表題をもじるならば、10月4日の高市早苗自民党総裁誕生から、21日の首相就任までの「日本を揺るがした2週間半」となろうか。

 斉藤鉄夫公明党代表、玉木雄一郎国民民主党代表、吉村洋文日本維新の会代表……と、政局の中心人物は目まぐるしく変わった。何よりも高市総裁が本当に首相になれるのか、をめぐる読み筋が二転三転した。米国の賭けサイト「Polymarket」で高市首相誕生の可能性がどの位とみられたか、その推移を確認しておこう。

 総裁選最終盤では20%以下だった可能性は、10月4日のサプライズ当選で一気に99%まで上昇した。ところが10月10日の自公連立の決裂によって、一時69%まで急落する。いったんは持ち直すも、玉木首相の可能性をにらみつつ、徐々に低下した。そして10月15日の自民・維新の政策協議の発表を機に、一気に高市首相モードに入った。

 株式市場の投資家心理もこの賭けサイトをなぞっている。株高期待の高市トレードに乗り日経平均株価は10月9日には4万8000円台で取引を終えたが、その後政局が不透明になるや14日には4万6000円台まで急落した。そして自民・維新が政策協議に合意したのを受け、16日には4万8000円台を回復した。高市首相が誕生した21日には日経平均先物は一時5万円の大台に乗せる場面があった。

 株式市場の値動きは荒いのだが、注目したいのは株価上昇の大きな流れが途切れていない点だ。これはハッキリした経済政策を打ち出さなかった石破茂政権から続く値動きである。石破首相が自民党総裁を退くまでの約1年間で、日経平均は20%あまり上昇した。高市トレードはその延長線にある。

 外国人投資家による日本株買いが盛り上がっている。外国勢は9月28日の週と10月5日の週に2週連続で日本株買い越しに動いている。財務省の集計によれば、日本株の買越額は合わせて4兆3611億円にのぼる。石破政権に見切りをつけた外国人投資家は、新政権による局面転換に期待したようにもみえる。

 アクサ・インベストメント・マネージャーズ(10月7日)、ゴールドマン・サックス(10月9日)、ロンドン証券取引所グループ(10月14日)、ゴールドマン・サックス(10月14~16日)、ブラックストーン(10月15日)、香港上海銀行東京支店(10月16日)、ソシエテ・ジェネラル証券(10月17日)……。

 折しも東京では金融庁肝いりで、内外の金融機関や投資家を集めた交流事業「Japan Weeks」を開催中。グローバルな投資家のポートフォリオ(保有資産の組み合わせ)では、すでに米国株でお腹が一杯。米国外への分散を考え出しているタイミングとあって、動き出す気配をみせた日本は格好の投資対象となるのだ。

米国債「中国の売却分」を買い増した日本

 新首相の成長志向に期待した日本株の高市トレードは分かるとして、債券・為替市場の懸念はどこに行ったのか。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 名古屋外国語大学特任教授 1957年千葉県生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員、特任編集員などを歴任後、2024年4月より現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスターも務めた。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『古典に学ぶ現代世界』『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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