トランプの脅しがカナダに効かない新世界
Foresight World Watcher's 7 Tips
ASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議のためマレーシアに到着したドナルド・トランプ米大統領は、クアラルンプール国際空港に降り立つなり陽気に踊ってみせました。歓迎式典の参加者に敬礼で応え、米国とマレーシアの国旗を持ってまたアピール。
ASEANとの良好な関係を印象づける演出ですが、両者の間には厄介な課題が多くあります。4月に打ち出した相互関税で、ASEAN各国は軒並み高い税率を課されました。中国からの迂回輸出を止めるのが狙いとはいえ、このままでは各国経済は大きな打撃を被ります。そもそも、第1次政権時代のトランプ氏は東アジアサミット(EAS)に一度も参加しないなど、ASEANへの関心が強いとはとても言えない。それがこの地域での中国の影響力拡大に繋がったとも指摘されます。
一方で、ASEANを含むインド太平洋と連携する国際社会の動きは強まっています。英国のCPTPP(包括的・先進的環太平洋経済連携協定)加盟に象徴される欧州だけでなく、インドネシアと湾岸協力会議(GCC)加盟国とのFTA交渉など、ASEAN側から他地域へのアプローチも注目されます。
米国が一国主義を押し進めている傍らで、世界には新たな連携のネットワークが生まれている。米国はここから取り残され、気付けば周縁的な存在になりはしないか。こうした懸念はしばしば米国内でも語られますが、ASEAN首脳会合から月末に韓国で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議は、新たな世界秩序をめぐる議論を深めるひとつの契機になったようです。
カナダのオンタリオ州が作った反トランンプ関税のCMにトランプ大統領が激怒、関税交渉の打ち切りを通告するといった“事件”もありました。カナダはさほど気にせず、アジアにパートナーシップを求めているとの米「フォーリン・ポリシー」誌の分析ほか、フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事7本、皆様もよろしければご一緒に。
[World Brief]Canada Seeks New Trade Partners in Asia After Trump's Blowup【Alexandra Sharp/Foreign Policy/10月24日付】
マレーシアでのASEANサミット、韓国でのAPECサミットと、インド太平洋圏における大規模な首脳外交の機会が続く。このタイミングで注目すべき動きを見せている国がある。カナダだ。マーク・カーニー首相は一足早く、カナダ首相として初のアジア諸国歴訪に繰り出した。
その背景には、自国の輸出先を米国一辺倒から欧州やアジアへと多様化させるという狙いがある。カナダの輸出は4分の3が米国向けで占められているが、第2次トランプ政権による関税政策の発動以降、両国の長い蜜月には亀裂が入っている。
カーニーの出発前日にもトランプはカナダとの関税交渉の打ち切りを宣言した。これはロナルド・レーガン元米大統領の音声を使って関税を批判するCMを加オンタリオ州政府が流したことへの反発だ。
「しかし、カーニーはトランプの脅しに比較的、動じていないようだ。『米国の貿易政策をコントロールすることはできない』と、カーニーは金曜(10月24日)、記者らに語った。」「『われわれがコントロールできるのは、アジアの複数の経済大国との関係を含む、新たなパートナーシップと機会を発展させることだ』」
「カナダの貿易相、マニンダー・シドゥによると、カナダは日本、マレーシア、フィリピン、韓国との貿易協定を求めている。カーニーはまた、実現の可能性が取り沙汰されている中国の習近平国家主席との会談の可能性も織り込みつつ、インドと中国を訪問する予定だ」
このように報じているのは、米「フォーリン・ポリシー」誌のニューズレター「ワールド・ブリーフ」の最新10月24日付号、「トランプの怒りを受けアジアに新たな貿易相手を求めるカナダ」だ。
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