レズ

レズとビアンの差違

欧米では、レズという言葉が古くからあり使用されてきたが、レズは、レズビアンという言葉に比して、より口語的・俗語的な表現で、蔑みや見下したニュアンスが含まれていた。

このため、欧米の女性同性愛当事者たちは、レズと比べ、音において離れた言葉として「ビアン（bian）」を使用しようとした。

• ところで、英語を含めて西欧の言語では、「Ｒ（アール）」の子音と「Ｌ（エル）」の子音は明瞭に区別される。「Ｒｅｓ」と「Ｌｅｓ」は、日本語では区別がないが、西欧の言語では別の音節である。res- で始まる単語は多数あるが、les- はむしろ少ない。（日本語となっている例だと、「応答・返信」の意味で使われる「レス」は、「ｒｅｓ」であるが、「ｌｅｓ」というのは、レスビアンの例以外、ほぼない）。
• 他方、ビアン（bian）というのは、レスビアンの形であって初めて意味を持つ。ビアンの形では、リビアン（Lybian, Libyan）、アラビアン（Arabian）等の語尾の略とも解釈できる。また、英語の Lesbian は、前の「レ」部分にアクセントがあり、実際の発音は、「レズビエン」という風に、後が、弱くなる。この音は、フランス語の bien（ビエン）とほぼ同じで、ビアンは発音上、「良い・善 bonum」から派生したフランス語の単語と同じになる。

英語や西欧の言語では、発音的に明瞭で、意味の指示性が非常に高い言葉は「レズ」であって、「ビアン」の方は、様々な意味に拡散して指示性が弱い。

「ビアン」は女性同性愛者を指す言葉の一つとして、日本にも紹介されたが、レズほど一般に広がらなかった。

一方、欧米では、キリスト教道徳等に基づく「同性愛の罪悪視」に対する見直しが起こり、性的指向である異性愛・同性愛・両性愛などについて、異常・正常を断ずるのはおかしいという考えが広く流布してきた。その結果、レズビアンということも、堂々と誇ってよいという見解も生じた。

これにより、レズも、軽蔑や罪悪視の言葉ではなく、中立的な、時にはポジティヴな言葉と見なされた。

pixivでの状況

pixivを含む二次元媒体表現の世界では、女性同性愛の「ストレートな表現（ガチ）」を「レズ」、よりやわらかな表現を「百合」として言い分ける傾向があった。

これに対し、そうした見方自体が差別的であるとする批判があり、現在の趨向としては、一般的な表示として「百合」を使うか、両タグを併記する作品が増えている。

ただし、レズとされる対象は、事実上、Ｒ－１８かそれに近い内容のものが多い。作者もしくは閲覧者が、よりセクシャルと感じるものは、レズとされ、セクシャルの度合いが緩やかな場合は、百合とする傾向が存在する。

Ｒ－１８タグとの親和性で見ると、このことは、数量的に確認出来る。すなわち、「百合」のタグが付いた作品の半数が、R-18タグを伴っているのに対し、「レズ」のタグの作品の約九割が、r-18タグを伴っている。