作家で妖怪学者の荒俣宏さん(78歳)は、日本有数の奇書の蒐集家としても知られる。『帝都物語』などのヒット作を世に出しながら、世界中の幻想文学の翻訳を手がけ、『トリビアの泉』『出没!アド街ック天国』などのテレビ番組では、博識な解説役として活躍してきた。 今年3月には『すぐ役に立つものは すぐ役に立たなくなる』を上梓した「知の怪人」がいま、肉体的、そして精神的な「死」を見つめているという。 撮影:岡田康且 2万冊の蔵書を整理する決意今年の7月、30年住んだ戸建てを手放して、妻と2人でマンションの一室に引っ越したんです。不動産の売買自体はうまくいったのですが、何より大変だったのは、2万冊の蔵書を処分しなければならないことでした。 手元に残したのは、本棚3つに収まる500冊だけ。僕が70年以上かけて蒐集した貴重な稀覯本ですら、「ゴミ」になってしまいました。トラックで運ばれていくのを見送りながら、心