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新内閣発足
saebou.hatenablog.com
ポール・トーマス・アンダーソン監督『ワン・バトル・アフター・アナザー』を見た。 www.youtube.com トマス・ピンチョン『ヴァインランド』のゆるい翻案…ということになっているが、あまり直線的でない『ヴァインランド』とはだいぶ違う話になっている。基本的にはフレンチ75という組織で活動していた革命家パット(レオナルド・ディカプリオ)と一人娘のシャーリーン(チェイス・インフィニティ)の話である。パットは幼いシャーリーンとともにボブとウィラという名前を使って田舎に潜伏し、ひとりで娘を育てるものの、シャーリーン/ウィラの実母である行方不明のパーフィディア(テヤナ・テイラー、なお英語のperfidiousは「二心ある」という意味で、名前でキャラばれしている)に執着している軍人ロックジョー(ショーン・ペン)に追われて逃走することになってしまう。逃走中に二手に分かれることになり、はぐれてしまった
石川慶監督『遠い山なみの光』を試写で見てきた。言わずと知れたカズオ・イシグロの小説の映画化である。 www.youtube.com 1980年代のイギリスで、イギリス人の父と日本人の母を持つニキ(カミラ・アイコ)は長崎出身の母悦子(吉田羊)に昔の話を聞こうとする。悦子は若かりし頃の自分(広瀬すず)が戦後の長崎で佐知子(二階堂ふみ)という子持ちの女性と仲良くなった話をする。しかしながらどうもその話にはいろいろ不可思議なところがあり… 私が今まで見たイシグロ作品の映像化の中では、イシグロ独特の小説の雰囲気をかなり忠実に再現しようとしている作品ではないかという気がする。長崎が負った戦争と原爆の傷跡がテーマで、被爆による差別やトラウマなどが日常生活に織り込まれた形で描かれる。一方で80年代だとイギリスにはまだ戦争のせいで日本を憎んでいる人がけっこういて…みたいな、現代の日本人はあまり意識していない
『サタンがおまえを待っている』を見た。 www.youtube.com 1980年代に北米で起こった、悪魔教信徒が子どもを組織的に虐待しているというデマから起こったパニックを扱ったドキュメンタリーである。ミシェル・スミスという女性が催眠によって思い出した虐待の記憶をローレンス・パズダーという精神科医が聞き取って本にした『ミシェルは覚えている』という本がきっかけでそういう話が広まった。この話は大々的にメディアで取り上げられ、各地で同じような虐待を訴える人が出て、保育園などで逮捕者が出たり裁判が起こったりしてえらいことになったらしいのだが、後にほとんどが虚偽の記憶であるとわかったらしい。 この映画はその過程を追っているのだが、流産で精神が不安定になった女性、変わった症例で有名になりたい医師、目新しい治療で手っ取り早く儲けたいが能力も医療倫理もあまりないセラピストたち、スキャンダラスなことが好き
『F1/エフワン』を見た。 www.youtube.com 大ケガでF1を引退したソニー(ブラッド・ピット)は耐久レースなどに出場していたが、昔なじみで現在はイギリスのAPXのチームでオーナーをつとめているルーベン(ハビエル・バルデム)に復帰を打診される。ソニーの荒っぽいやり方のせいで、若手の有望株であるジョシュア(ダムソン・イドリス)や女性初のテクニカルディレクターであるケイト(ケリー・コンドン)とは摩擦がたえないが… 全体がブラピのアイドル映画みたいな感じで、設定からしてかなり現実離れしているのに全体がどうにかブラピの魅力と、脇を固める俳優陣の演技で保っている…みたいな作品である。『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキーが監督なので、話は前作にけっこう似ているし、大スターを真ん中に据えて脇はベテランと若手有望株の役者の演技で固めるという作りも同じである。しかしながら『トッ
ジェームズ・ガン監督『スーパーマン』を見てきた。 www.youtube.com いきなりクラーク・ケントことスーパーマン(デイヴィッド・コレンスウェット)が、ボラヴィアによるジャルハンプル侵略に介入したという理由で「ボラヴィアのハンマー」なる相手にボコボコにされるところから始まる。スーパーマンは勝手に国際紛争に介入したということで批判されており、スーパーマンを追い落とすことに執着しているレックス・ルーサー(ニコラス・ホルト)はこの動きを加速させてスーパーマンを失脚させる工作に全力を注いでいる。中傷やら非難やらでにっちもさっちもいかない状況に陥るスーパーマンだが… オリジンの話とか細かい説明は全部カットして、現代の文脈に即してスーパーマンが暮らしていたらどうなるかということをけっこうリアルに描くほうに全振りした作品である。この描写がえらくちゃんとしており、敵であるルーサーはいたるところにカ
李相日監督『国宝』を見た。 www.youtube.com お話は1960年代の長崎で始まる。任侠の親分の跡取り息子として生まれた喜久雄(吉沢亮)は抗争で親を殺され、いろいろあって上方歌舞伎の人気役者花井半二郎(渡辺謙)に引き取られる。喜久雄は花井の息子である俊介(横浜流星)とともに厳しい訓練を受け、女方として注目されるようになる。血筋のない喜久雄に歌舞伎界は冷たいが、一方で半二郎は喜久雄を高く評価しており… 映画としては大変面白く、また歌舞伎の舞台をちゃんと撮っているので見ていて全く飽きるようなところはない映画である。細かいお稽古の様子とか、早着替え場面などをふだん見えない角度から撮ってくれるところなど、舞台好きとしては(歌舞伎には詳しくなくても)おう、こんなことやってるのか…と単純に技術的に面白いと思えるところがたくさんある。吉沢亮と横浜流星はどちらもとても美しい動きで本当に千両役者み
ライアン・クーグラー新作『罪人たち』を見た。 www.youtube.com 舞台は1932年のミシシッピ州クラークスデイルである。シカゴでギャングの一員として儲けて故郷に帰ってきた双子のスモークとスタック(マイケル・B・ジョーダン)は、地元の黒人向けにブルースを聴かせる酒場を作ることにする。音楽家であるデルタ・スリム(デルロイ・リンド)やいとこのサミー(マイルズ・カートン)など、さまざまなスタッフを集めて開店準備をするが… いろんなジャンル要素をこれでもかと詰め込んだ映画で、途中まではミュージカル…なのだが、中盤くらいからは吸血鬼ホラーになり、さらに終盤はまたもうひとつヤマ場があり…というふしぎな作品である。アメリカ南部における黒人の経験を多層的に描いているのだが、エピローグ部分以外は基本的に1日間の話なのに非常に描写がぶ厚くて歴史の重みを感じさせる。黒人のみならず南部に住んでいる中国系
白老町のウポポイに行ってきた。 国立アイヌ民族博物館に行ったが、けっこう広い施設である。 展示室はこんな感じ。 ラッコの皮だそうな。 船。 アイヌの伝統楽器トンコリを電子楽器に。 家の模型。 熊送りの熊だそうな。 お祭りのお供え。 外には家の再現が。 けっこう霧がかかっている。 お金のかかった施設で楽しいところなのだが、「共生」だからなのか、わりとアイヌ差別に関する展示は控えめで、植民地支配が結果としてこの施設につながっているということがわりとぼかされているというか、焦点として扱われていないように思った。とくに最初のほうで上映されていた、ヨーロッパやアメリカの各地の博物館に収蔵されているアイヌの文物に関する短編映画は、いかにドイツなどの博物館がアイヌの文物を欲しがっていたかというような話はあるのだが、なんでか…という話になるとアイヌの文物が優れた芸術的価値を持っているから、というのに全てが
コラリー・ファルジャ監督The Substanceを見た。 www.youtube.co 元オスカー女優だが、今は役もなく、テレビのエアロビクス番組に出ているエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は50歳になったとたん、年をとりすぎだとして番組を解雇されてしまう。捨て鉢になったエリザベスは、ふとしたことから知ったSubstanceなる薬物を試してみる。この薬物を摂取するとより若く美しいバージョンの自分ができるのだが、必ず7日でもとの自分に戻らねばならず、その後は7日ごとに若い自分と今の自分で交代することになる。エリザベスは若く美しいバージョンの自分を作り、スー(マーガレット・クアリー)と名乗ってエアロビクス番組のオーディションを受け、成功するが… 発想じたいは『ドリアン・グレイの肖像』に近くて、若さと美しさへの執着という古典的なテーマを扱っているのだが、とにかく処理のしかたが新しいし独創的
実写版の『白雪姫』を見てきた。アニメ版をかなり変更してリメイクした作品である。 www.youtube.com とある王国で吹雪の日に跡継ぎのお姫さまが生まれ、白雪姫(スノーホワイト)と名付けられた。白雪姫(レイチェル・ゼグラー)は賢く愛らしい王女に成長するが、母が亡くなり、王は突然現れた謎の美女(ガル・ガドット)と再婚する。女王となった継母は王を追い出して国の実権を掌握し、白雪姫を虐待するが… いろいろ問題のある翻案である。レイチェル演じる白雪姫が可愛いし歌のうまさは鉄板だし、面白いところも多少はあり、若い女性がポジティブに人生を切り開く様子を明るく描いていて子ども向けの映画としてとくにものすごくひどいというわけではないと思うのだが、正直なところ、最近Netflixとかアマゾンプライムなんかでよく配信されている「パッとしないけど休みの日に見るならまあいいか」みたいなヒロインものファンタジ
ダブリン国際映画祭でセイディ・フロスト監督のドキュメンタリー『ツイッギー』を見てきた。 www.youtube.com ワーキングクラスの娘だった気取らない少女ツイッギーが60年代のロンドンで新しい女性美を体現するモデルとして登場し、一世を風靡して時代のアイコンとなるが、その後も舞台やテレビ、モデル業などで着実にキャリアを積み重ね、今もいろいろな世代の女性に訴えるオシャレなモデルとして地位を確立している…ということをいろいろなインタビュー(本人や親しい家族、イギリスのファッション界の人たちからダスティン・ホフマンみたいなアメリカ映画界の業界人まで、かなりいろんな人の話をとっている)や写真を使って見せる作品である。言ってみれば労働者階級の女性のサクセスストーリーみたいなドキュメンタリーである。いくつかつらいこともあったという話は出てくるのだが、全体的にはツイッギーを自分の力で道を切り開いたシ
I'm ギンツ・ジルバロディス監督『Flow』を試写で見た。 www.youtube.com 主人公はネコで、大洪水に見舞われた世界を舞台に、船に乗ったりしながらさまざまな他の動物たちと出会い、冒険する様子を描いている。人間は出てこないし、セリフは全く無い。洪水は気候変動のせいなのかな…とも思うのだが、生態系などはあまり現実に即していない感じで、カピバラとヘビクイワシ(?)とワオキツネザルとネコとイヌがヨーロッパ風の気候の地域に住んでいる。風景についても巨大な猫の像が森の近くにあったり、野外劇場の跡地みたいなのがあったりしてシュールである。オープンソースソフトウェアのBlenderで作ったそうで、ヴィジュアルが非常に独特である。 セリフはないのだが、孤独な動物だったはずのネコが泳ぎを上達させて魚をとるようになったり、木登りの技術を使って生き残ったり、仲間を作って助け合うようになったり、キ
『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を見てきた。 www.youtube.com スティーヴの衣鉢を継いでキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)は、新大統領となったロス(ハリソン・フォード)の祝賀会に一番弟子で2代目ファルコンとなるホアキン・トレス(ダニー・ラミレス)と、大先輩であるアイザイア・ブラッドリー(カール・ランブリー)を連れて出席する。そこで突然ロス暗殺未遂が発生し、なんとアイザイアが銃撃に加わってしまった。アイザイアが暗殺にかかわるわけがないと思ったサムは捜査を開始するが… なんだかいろいろアラがあるのはよくわかるのだが、おそらく意図していないところで妙なリアリティがあり、個人的にはきわめて感動してしまった(というか映画館で人目をはばからず変なところでボロ泣きしてしまった)作品である。CGに安っぽいところがあるし、アクションの編集な
ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール監督『TATAMI』を見た。 www.youtube.com ジョージアのトビリシで開催中の女子世界柔道選手権に出場したイランの有力選手レイラ(アリエンヌ・マンディ)は、イスラエルの選手との対戦を避けて棄権するようイラン柔道協会から圧力をかけられる。監督のマルヤム(ザーラ・アミール、監督が出演)も脅迫を受け、レイラにも脅迫が及ぶ。何かがおかしいと思った選手権スタッフたちはイランのチームに注意しはじめるが… 実際に2019年に日本で行われた柔道選手権で起こったことにヒントを得ているそうで、イランの選手が政府から棄権するよう圧力をかけられたそうである。モノクロの力のある映像で、緊張感のあるスポーツスリラーだ。キャストやスタッフのうち、イラン人は全員亡命者になっているそうで、キャストはイラン以外の国籍も持っている中東系も起用しており、『聖なるイチジクの種』同様、
アイスランドペニス博物館に行ってきた。ここはさまざまな動物のペニスの研究・教育に関するけっこう真面目な博物館で、コレクションは主にペニスの科学標本、ペニスに関係するアート作品や文化的な遺物からなっている。科学やアートに関するものとはいえ、本日のエントリはペニスの画像だらけなので閲覧注意である(ひょっとしたらはてなブログに削除されるかな…)。ただしこの博物館じたいは教育的な機関なのでそんなに過激な展示はなく、保護者や教員の付き添いがあれば子どもでも見られるそうだ。 入り口。 入るといきなりこれがある。ちなみにバイアグラ関係の展示は中にもあった。 中はこんな感じで、さまざまな動物のペニスの標本が所狭しと展示されている。それぞれの動物の生殖行動に関する説明もついており、かなり教育的だ。 ネコとかクジラとかのペニスとヒトのペニスの標本が全く同じノリで展示されている。それぞれの展示に動物ごとの配偶行
突然思い立ってアイスランドに行ってきた。レイキャヴィーク郊外のケプラヴィーク空港に到着し、まずは空港近くのヴァイキングワールド博物館というところを訪問。 メインの展示はこの船。2000年にヴァイキングの時代を模した形態でアメリカまで航海した Íslendingur号である。 乗組員のみなさん 記念撮影 他にもいろいろ展示がある。 角かぶとはインチキという話では… チェスもできるようだ。 なお、この日は吹雪で外はこんな感じで、バス停までえらい遠く、遭難しかけた。
ジェームズ・マンゴールド監督の新作『名もなき者/A Complete Unknown』を見てきた。ボブ・ディランのミュージシャンバイオピックである。 www.youtube.com 1961年、若きボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)がニューヨークに出てくるところから始まる。ボブは憧れのウディ・ガスリー(スクート・マクネリー)の病床をお見舞いし、これまた尊敬していたピート・シーガー(エドワード・ノートン)にも引き立ててもらって、フォークシンガーとしてたちまち頭角をあらわす。ボブはシルヴィ(エル・ファニング)と付き合う一方、ジョーン・バエズ(モニカ・バルバロ)にも惹かれる。大スターになったボブは音楽的に新しいことを試したいと思うようになるが… 一見したところ王道のミュージシャンバイオピックなのだが、ディランのクリエイティヴィティの転換点となる1965年のニューポート・フォーク・フェスティバ
ジェシー・アイゼンバーグ監督作『リアル・ペイン~心の旅~』を見た。 www.youtube.com 同い年のいとこ同士であるユダヤ系のデイヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)は、亡くなったおばあちゃんの遺志でポーランドでのホロコーストヘリテージツアーに参加することになる。妻子がいてそこそこ仕事でも成功しているデイヴィッドはシャイでもの静かで神経質だが、ベンジーはとても社交スキルが高くてチャーミングである一方、むら気で不安定なところがあり、正反対の性格のふたりである。ツアーの間、ベンジーは他のツアー客と仲良くなるが、一方で何度か感情を爆発させてデイヴィッドに非常に居心地悪い思いをさせる。 抑えた演出と脚本で丁寧に主人公二人の心情を描きつつ、コミカルで笑えるところもたくさんあり、大変よくできた作品である。視点人物はデイヴィッドなのだが、ベンジーの社交スキルの高さ
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』を試写で見た。 www.youtube.com 舞台は1970年代のニューヨークである。若きドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)は野心はあるがなかなかいろいろなことをうまくこなせない青年実業家である。黒人住民に対する差別でトランプ家の不動産事業が法的にまずいことになり、トランプは有名だが手段を選ばないことで有名な弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)に頼る。トランプはコーンから非情な手段を学び、どんどん出世していくが… 内容だけ書くと『ウルフ・オブ・ウォールストリート』とかに近そうなのだが、ヴィジュアルや雰囲気が全然違う…というか、あのへんの映画にあるハイテンションな感じがまったくない。大部分は手持ちカメラで撮影している上、色彩などに全然華やかなところがなく、始終けっこうテンションが低くて不安定な映像が続く。パーティなんかの場面にも
エレナ・ナヴェリア監督『ブラックバード、ブラックベリー、私は私。』を試写で見た。 www.youtube.com ヒロインはジョージアの田舎町で何でも売っている日用品店を営んでいる48歳のエテロ(エカ・チャブレイシュビリ)である。あまり幸せな家庭環境で育ったわけではないエテロはひとりで店を切り盛りして暮らしていたが、ブラックベリー摘みをしていた時に大きな事故にあってしまう。とりあえずはなんとか無事に生還したエテロだが、これをきっかけに人生を考え直し、初めて男性と関係を持ち、恋愛も体験することになる。 いつ死ぬかわからないんだから人生を楽しまねば…と思ってこれまでの暮らしを変える中年女性の話である。若くもないし綺麗でもないエテロが、別に綺麗にもならず、若々しくもならず、マイペースで自分らしいままセックスや恋愛を体験する様子をオフビートなユーモアをまじえて描いている。セックスや恋愛を体験したか
ルカ・グァダニーノ監督の新作Queerを見た。ウィリアム・バロウズの小説『おかま』の映画化である。 www.youtube.com 舞台は1950年代のメキシコシティである。中年のリッチなゲイのインテリ男性であるリー(ダニエル・クレイグ)は町で見かけたメガネのアメリカ人青年ユージーン(ドルー・スターキー)に惹かれる。つかみどころのないユージーンと一緒に過ごしたいリーは、ユージーンを南米旅行に連れて行くことにする。リーはテレパシー能力を高めてくれるという噂のある南米の植物ヤヘを試したいと思っており、ユージーンとともに奥地に住む科学者コッター博士(レスリー・マンヴィル)を訪ねる。 そもそも原作者のバロウズ自身が実験的で変わったものを書く作家なので、この映画もだいぶへんてこりんな作品である。三部構成で、最初の二部くらいはいったいどこに向かうのかよくわからないゆっくりしたロマンスものみたいな感じ…
『グランド・セフト・ハムレット』(Grand Theft Hamlet) を見てきた。これは新型コロナウイルス感染症流行によるロックダウンの際、『グランド・セフト・オート・オンライン』の中で『ハムレット』を上演しようとした人たちについてのドキュメンタリーである。終盤の数分以外、ほぼ全てがゲームを記録した映像で展開される。 www.youtube.com 2021年、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンで仕事のない役者サムとマークは、いつも遊んでいる『グランド・セフト・オート・オンライン』のヴァインウッド(ハリウッドにすごく似てる)という地域の中に野外ホールなど芝居の上演ができそうな場所があるのを見つけ、ここで『ハムレット』を上演することにする。サムの妻で映像作家であるピニー(この映画の共同監督)もGTAオンラインを始め、世界初のGTA内演劇プロダクションが始動する。いろいろ問題も出て
エドワード・ベルガー監督監督『教皇選挙』を見た。 www.youtube.com ローマ教皇が突然亡くなり、首席枢機卿トマス・ローレンス(レイフ・ファインズ)はコンクラーヴェ(教皇選挙)を催行する責任者となる。枢機卿たちが到着し、コンクラーヴェ期間の隔離が始まるが、秘密で任命されてこれまで全く存在を知られていなかったベニテス枢機卿(カルロス・ディエズ)が突然到着し、さらに選挙開始直前に有力候補のトランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)について職務上の疑惑が持ち上がるなど、ローレンスは気の休まる暇もない。ローレンスは自分と同様、リベラル派のアルド・ベッリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)を推しているが… 中盤くらいまでは真面目な政治サスペンスといった感じなのだが、だんだんなんか笑える映画に見えてくる…というか、そもそもカトリック教会の儀礼じたいがちょっと大げさで派手なものでもあるので、芝居がかか
Small Things Like Theseを見てきた。アイルランドの有名作家クレア・キーガン(『コット、はじまりの夏』原作者)の小説を同じくアイルランドの有名劇作家エンダ・ウォルシュが脚色したものである。マット・デイモンがプロデューサーの一人なのだが、キリアンはもともとキーガンのファンで、この映画化プロジェクトのことを『オッペンハイマー』撮影中にマットに話したところ、マットが興味を持って参加することになったそうだ。 www.youtube.com 舞台は1985年、ウェクスフォードの郊外のニューロス近辺である。石炭業者のビル(キリアン・マーフィ)はシングルマザーの息子で、今では幸せな家庭を築いているが、お金持ちの地主だった女性ミセス・ウィルソン(ミシェル・フェアリー)の助けでなんとか一人前になれたという苦労人である。ビルの取引先である女子修道院にはマグダレン洗濯所があって未婚で妊娠した
アンドレア・アーノルド監督の新作Birdを見てきた。 www.youtube.com 12歳のベイリー(ニキヤ・アダムズ)は若い父親バグ(バリー・キョーガン)に引き取られて暮らしている。バグはカエルからあやしげなドラッグを作る商売に手を出しており、さらに土曜日に新しいガールフレンドと結婚すると宣言する。父親の電撃結婚に不満なベイリーは、バードと名乗るふしぎな男(フランツ・ロゴフスキ)に出会う。 とにかくベイリーが暮らしている状況は相当に深刻である。バグは14歳くらいの時にベイリーの兄ハンター(ジェイソン・ブダ)の父親になったそうで、まだ若いが養わないといけない子どもが複数いる…のに定職にはついていないようで、あやしい仕事をしている。ベイリーが住んでいる家はものすごいボロ集合住宅でほとんどプライバシーもないし、犯罪も横行していて、ベイリーもあやうく犯罪に巻き込まれて非行少女になりかけるという
ジョン・M・チュウ監督『ウィキッド ふたりの魔女』を見てきた。 www.youtube.com 舞台の大人気ミュージカル『ウィキッド』の第一幕にあたる部分を映画化した作品である。『オズの魔法使い』の前日譚読み直しみたいな作品で、主人公は西の悪い魔女ことエルファバ(シンシア・エリヴォ)である。生まれた時から肌が緑色だったエルファバはみんなにからかわれ、親からも疎まれて不幸せな少女時代を送る。車椅子を使っている妹のネッサローズ(マリッサ・ボーディ)の付き添いでシズ大学に出向いたところ、魔法の才能を見出されて一躍、期待される学生となる。大学で同室になった人気者のガリンダ(アリアナ・グランデ、後にグリンダと呼ばれることになる)は最初はエルファバをいじめていたが、やがて仲良くなる。 今年の初めに舞台を見たばかりで正直、大変不安だったのだが、期待を上回る面白さで、むしろ台本は舞台より時間をかけてキャラ
リドリー・スコットの『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』を見てきた。 www.youtube.com ヌミディアの戦士ハノ(ポール・メスカル)はローマの侵攻で捕虜になり、剣闘士を訓練しているマクリヌス(デンゼル・ワシントン)に買われる。ハノは同じく戦士であった妻アリシャト(ユヴァル・ゴネン)を戦闘で殺した将軍アカシウス(ペドロ・パスカル)に復讐したいと願っている。一方、アカシウスはローマ皇帝ゲタ(ジョゼフ・クィン)とカラカラ(フレッド・ヘッキンジャー)の腐敗に嫌気がさし、前皇帝マルクス・アウレリウスの娘である愛妻ルッシラ(コニー・ニールセン)と組んで反乱を企てる。 24年前の有名作『グラディエーター』の続編である。私はそもそも前作にあまり思い入れがないのでそんなに深く第1作を分析したことがあるとかいうわけではないのだが、それでもけっこう前作に似たところもあると思った。そんなにたくさん新機
『新居浜ひかり物語 青いライオン』を試写で見た。自閉症の画家である石村嘉成の半生を描いたものである。山陽放送が作った地元映画みたいな作品だ。 www.youtube.com とにかくダメな作品である。石村嘉成の画家活動に関するドキュメンタリーならまあいいと思うのだが、子どもの時から現在までの話が回想フィクションパートみたいな感じでくっついており、ここが低品質な再現ドラマみたいな感じで全く要らない。演技もたいがいわざとらしいし、演出も安っぽい。療育に関する教育的な内容が含まれているのだが、登場人物が突っ立って療育について説明するだけみたいなところが多く、これなら療育の専門家へのインタビューを織り込んで全部ドキュメンタリーにしたほうがマシだったと思う。 さらに良くないと思うのは、この再現ドラマパートが基本的に石村嘉成の母親にフォーカスしており、この母がすごい犠牲を払って息子を育てようとする様子
アレックス・ガーランド監督の新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を見てきた。 www.youtube.com 近未来の全体主義的なアメリカが舞台である。3期目をつとめている大統領の政府に対していろいろな地域の党派が武力で刃向かっており、全米が内戦に巻き込まれている。戦争写真家のリー(カーステン・ダンスト)はジャーナリスト仲間のジョエル(ヴァグネル・モウラ)、師匠格のサミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)、リーに憧れてグループに加わった若い写真家ジェシー(ケイリー・スピーニー)とともにワシントンDCを目指す。 現代のアメリカの分断が進んだらそのままこうなる…みたいな内戦を描いたえらくリアルな作品である。リアルな内戦の映画というと舞台はバルカン半島だったりアフリカだったりしてアメリカ人には全くの他人事なんだろう…と思うのだが、それをアメリカに持ってきて描いているというところがポ
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