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新内閣発足
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【追記あり】アーティスト原田裕規が篠田節子の小説『青の純度』の書評で、自著の「ラッセン本」との類似を指摘。「願わくば適切な手続きのもとで記されてほしい」 画家クリスチャン・ラッセンを彷彿とさせる登場人物をめぐる、アート×ミステリー小説『青の純度』(篠田節子著、集英社)。これまでラッセンに関する展覧会企画や複数の書籍を刊行してきた原田裕規が書評を共同通信で執筆し、議論を呼んでいる。原田に取材し、コメントを掲載する バブル期の日本を沸かせた「マリンアート」の人気画家をめぐる小説『青の純度』直木賞など数々の受賞歴がある篠田節子の小説『青の純度』(集英社)について、アーティストの原田裕規が書評を執筆し、共同通信から全国各紙に配信されたほか、本人のホームページでも公開されている。 そのなかで原田は、本書のテーマや主人公の行動が、自らの研究や著書、立ち位置と重なるものがあると指摘している。以下、書評の
江口寿史「中央線文化祭2025」告知ヴィジュアルの波紋マンガ家の江口寿史作のルミネ荻窪「中央線文化祭2025」(2025年10月18日、19日開催)告知ヴィジュアルが波紋を広げている。 告知ヴィジュアルが公開された後、タレント、執筆家の金井球から自分の横顔が知らないうちにイラストに使用されていると問い合わせがされた。これを受け、江口氏はInstagramで流れてきた横顔を元に描いたものと説明し、金井氏から事後に承諾を得たことをXに投稿した(*1)。少なくとも、これで法的な問題は事後的にではあるが治癒されたことになる。 もっとも、発注者のルミネ荻窪は、2025年10月6日、「告知ビジュアルに関して、必要な確認を行った結果、制作過程に問題があったことを重く受け止め、該当ビジュアルを今後一切使用しないことといたします」として、告知ヴィジュアルの不使用を発表した(*2)。 その後、「中央線文化祭2
美術家・梅津庸一が主宰を務める美術の共同体「パープルーム」が、神奈川県郊外のダイエー海老名店にパープルームギャラリーを新装開店させた。8月25日昼過ぎ、オープン早々にこの地に足を運んだのは、アーティストの中島晴矢だ。自身の活動のなかで都市論や郊外といったテーマを扱い、現在は「美学校」の講師として梅津の同僚でもある中島が、アート界を騒がすパープルームギャラリーのダイエー出店について、梅津にインタビューを実施。「いまアートがワクワクするような分野じゃなくなっている」。そう語る梅津が、ここダイエー海老名店で体現しようとしているものとは、いったいなんなのか?【Tokyo Art Beat】 *開店レポートはこちら
ホーム / ニュース・記事 / ダイエー海老名店にオープンした新生パープルームギャラリーを早速見た! 日々の暮らしのど真ん中で、凝り固まった「現代アート」を足元から問う
私たちの外にある公共空間の現在私たちの外にある場所は危険で陰鬱な場所になっていった。天災には高い人工堤防を。人災には兵器を携え、国や人種、土地の外側に対して緊張し、現在も多くの民間人が犠牲になっている。「外は危ない」というとき、いつも外での活動を支えていたのは「集まり」だったのではないだろうか。それは時にデモや演劇の場になり、空き地や土手での遊びの場にもなった。この私たち個の集まりと外にある公共空間はつねに関係し向き合ってきたように見える。
作戦記録画24点を「ひっそり」公開東京国立近代美術館で10月26日まで開催中の企画展「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」展は、アジア・太平洋戦争と美術の関係を扱った重要な展覧会だ。展示の中核をなすのは、戦後米軍が接収し1970年に日本に戻された「作戦記録画」。本展は、同館が所蔵する作戦記録画153点のうち24点を展示し、これは一度のまとまった公開点数として戦後最多規模となる(別会場の常設展でもさらに作品を展示)。借用作品や資料を織り交ぜ、報道や文学、軍歌、漫画など多分野が醸成した時代の「文脈」も提示しながら戦時・戦後の美術動向を浮き彫りにした本展は、戦後80年の節目にふさわしい直球の企画と言える。 いっぽう、本展レポートが指摘するように、あたかも「ひっそり」と開催するような広報体制に戸惑いの声が上がっている。チラシやポスター、カタログ、告知のリリースがなく、内覧会も
ひっそりと開催される大規模な戦争画展竹橋の東京国立近代美術館で、10月26日まで開催されている「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」展は、異例の展覧会である。戦後80年という節目の年に、同館収蔵の戦争記録画153点のうち24点を中心とした大規模な企画展でありながら、プレスリリースもチラシもポスターも内覧会もない。まるで「密かに」開催されているかのような状況に、美術界の関係者のみならず、鑑賞者からは戸惑いの声が上がっている。 同時開催のコレクション展とは対照的に、本展には積極的な広報が行われていない。メインヴィジュアルには松本竣介の《並木道》(1943)が使用されているが、このイメージだけでは「戦争画」を扱う展覧会だと判断することは困難だろう。編集部が開幕翌日に本展を訪れた際、外国人観光客を含む鑑賞者の多くが、タイトルから想像できない展示内容に困惑していたようにも見えた
競技ダンスを舞台に、男たちが衝突し、心を交わし合うマンガ『10DANCE』男性性はそこに「在る」。ゆえに「見えない」し、「言葉にならない」。女性の社会進出を阻むものを「ガラスの天井」と呼ぶが、ここで「ガラス」という言葉が出てくることは、男性性という側面から語るにしても極めて示唆的だ(それを阻むものは不可視なのだ!)。この世に生まれ落ちて他者に出会った時点で、性という演技はすでに始まっていて、われらはそこから逃げ出す道をいまだに身を捩って探している最中である。先は長く、道行は暗い。われらを覆うその構造は、暴いても暴いても巨きい。 そのような世界に放り込まれた私がBLというジャンルを愛するようになったのは、ある意味で必然である。BLは確かに問題含みで、つねに明るく肯定しうるものでもないのだが(実際BLはゲイなどマセクシュアル男性表象の性的搾取であるとの批判が出ており、それは一定受け止めねばなら
ホーム / ニュース・記事 / 【直島新美術館】開館レポ。直島に新たな必見スポットが誕生!集落に佇む安藤忠雄建築でアート作品を楽しむ。行き方・アクセスも
東京・六本木のサントリー美術館で展覧会「酒呑童子ビギンズ」が4月29日に開幕する。会期は6月15日まで(展示替えあり)。 日本三大妖怪のひとつともされる鬼「酒呑童子」の物語のなかでも、同館が所蔵する室町時代の狩野元信筆《酒伝童子絵巻》(重要文化財)は、後世に影響を与えた古例として名高い。本展は、解体修理を終えた本作をかつてない規模で大公開し、あわせて日本初公開の里帰り作品など多様な酒呑童子の絵巻や絵画作品を紹介。酒呑童子にまつわるふたつの「はじまり」に迫るものだ。 日本でもっとも有名な鬼である酒呑童子とは何者か? 知られざる出生の秘密とは? 本展担当学芸員である同館の上野友愛(ともえ)副学芸部長に解説してもらった。 源頼光 VS 人攫いの鬼。酒呑童子の物語とは?──まず本展のテーマである酒呑童子の物語のあらすじを教えていただけますか。 上野 物語は、平安時代の京の都で美しい女性が姿を消す怪
国際的注目が高まるなか、東京初の大規模展造形作家・岡﨑乾二郎の東京で初の大規模な展覧会「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」が東京都現代美術館で4月29日に始まった。会期は7月21日まで。担当は同館の藪前知子学芸員。 岡﨑は1955年東京生まれ。1981年の初個展「たてもののきもち」(村松画廊)で注目を集め、彫刻や絵画に留まらず、メディアアート、建築、環境計画、ロボット開発、教育と広汎かつ先鋭的な活動を展開してきた。数多くの国際展にも参加し、近年はパリや韓国で個展を開催して国際的な注目が高まっている。批評活動でも知られ、著作『ルネサンス 経験の条件』(2014)や『抽象の力 近代芸術の解析』(2018)は既存の芸術観に新たな視点をもたらして反響を呼び、東京国立近代美術館で回顧展が開催中のヒルマ・アフ・クリントの再評価にもかかわった。
新しい技術や国・文化の交流を促進し、世界共通の課題に取り組む国際的なイベント「国際万国博覧会(万博)」。約5年に一度のペースで、世界各地で開催される。 「2025年日本国際博覧会(通称:大阪・関西万博)」のテーマは、”いのち輝く未来社会のデザイン”。大阪の夢洲(ゆめしま)を舞台に、4月13日~10月13日、184日間開催される。 会場全体の広さは約155ha(東京ドーム約33個分)、パビリオン数は180以上にのぼる本万博のなかから、本記事ではアートファンや建築好き要注目のスポットを紹介する。
職員全員が“ずぶの素人”から始まった35年前2025年3月31日、多くの人々に惜しまれながら、DIC川村記念美術館が千葉県佐倉市での35年余りの活動に終止符を打った。 同館が川村記念美術館として開館したのは、1990年5月2日。ゴールデンウィークの真っ只中だったからか、はたまた大手新聞の一面を使って派手に広告を出したからなのか、「1日100人くらい来ればいいよ」という、初代館長で大日本インキ化学工業株式会社(現・DIC株式会社)の相談役だった川村勝巳氏の思惑は大きく外れ、地元から700人超がつめかけた。物見遊山に来た人も多かったのだろう。なにせ、千葉市街から車で小一時間、田畑が一面に広がるなか、突如として世界に誇る20世紀西洋美術の名作が見られる美術館ができたのだから。ルノワールやモネ、ピカソ、シャガールなどが並ぶ最初の展示室で、「ここにある絵はすべて本物なのですか?」と真顔で聞かれること
東京国立近代美術館で「ヒルマ・アフ・クリント展」が開催されている。会期は3月4日〜6月15日。 ヒルマ・アフ・クリント(1862〜1944)は、スウェーデン生まれの画家。その存在は長らく美術史の陰に隠れてきたが、2010年代に急速に再評価が高まり、近年は世界的に大ブレークしている。なぜいま、この画家に大きな注目が集まるのか。その魅力や、絵に込められた意味とは。そして彼女について言われる「カンディンスキーやモンドリアンよりも抽象絵画を早く創案したパイオニア」「美術史を書き換える存在」という説明は本当なのか? 「ヒルマ・アフ・クリント展」の企画を担当する三輪健仁(東京国立近代美術館美術課長)に解説してもらった。 *前編はこちら
東京国立近代美術館で「ヒルマ・アフ・クリント展」が開催されている。会期は3月4日〜6月15日。 ヒルマ・アフ・クリント(1862〜1944)は、スウェーデン生まれの画家。その存在は長らく美術史の陰に隠れてきたが、2010年代に急速に再評価が高まり、近年は世界的に大ブレークしている。なぜいま、この画家に大きな注目が集まるのか。その魅力や、絵に込められた意味とは。そして彼女について言われる「カンディンスキーやモンドリアンよりも抽象絵画を早く創案したパイオニア」「美術史を書き換える存在」という説明は本当なのか? 「ヒルマ・アフ・クリント展」の企画を担当する三輪健仁(東京国立近代美術館美術課長)に解説してもらった。 *レポートはこちら
名作小説『オズの魔法使い』で少女ドロシーがオズの国に迷い込むずっと前に遡り、この国でもっとも嫌われた「悪い魔女」ともっとも愛された「善い魔女」の過去をふたりの視点から描いたミュージカル『ウィキッド』。これをジョン・M・チュウ監督が2部作で映画化した前編『ウィキッド ふたりの魔女』が現在公開中だ。「悪い魔女」ことエルファバをシンシア・エリヴォ、「善い魔女」ことグリンダをアリアナ・グランデが演じ、大きな話題となっている。本作について、現代魔女術を研究、アメリカやオーストラリアの魔女たちの世界をフィールドワークし、自身も現代魔女術を実践する筆者が論じる。【Tokyo Art Beat】 現代魔女が見た『ウィキッド』2025年3月7日、長く待ち望まれた映画『ウィキッド ふたりの魔女(Wicked)』が公開された。この作品は、グレゴリー・マグワイアの1995年の小説『ウィキッド 誰も知らない、もう一
ロスコ・ルームをSANAA設計で新設昨年12月、規模縮小と東京都内へ移転が発表されていた、DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)。化学メーカーDIC株式会社(社長執行役員:池田尚志)が所有・運営する同館の今後の方針が明らかになった。 3月12日、DIC株式会社と公益財団法人国際文化会館(理事長:近藤正晃ジェームス)は、アート・建築分野を起点とする協業に合意したことを発表。 DIC川村記念美術館は、卓越した戦後アメリカ美術を中心とする20世紀美術品を所蔵するが、そのコレクションを中核に東京・六本木の国際文化会館へと移転する。 コレクションを代表するマーク・ロスコの「シーグラム壁画」7点すべては、国際文化会館が建設する新西館へと移設。建築ユニットSANAAが設計する常設展示室「ロスコ・ルーム」が開設される。新設「ロスコ・ルーム」はDICと国際文化会館が共同運営し、アート・建築の力によって民間外交
【1〜3月】「ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965」(パナソニック汐留美術館)近代建築の巨匠として世界的に知られ、視覚芸術の他分野においても革新をもたらしたル・コルビュジエ。本展は1930年代以降にコルビュジエが手がけた絵画、彫刻、素描、タペストリーを紹介し、さらに彼が求め続けた新しい技術の芸術的利用にもスポットを当てる。そして後期の建築作品も併せて紹介することで、はるかに伝統的な枠組みを超えたル・コルビュジエの円熟期の芸術観を明らかにする。 会場:パナソニック汐留美術館 会期:1月11日〜3月23日
イギリスの生活文化に大きな変化をもたらし、デザインブームの火付け役にもなったテレンス・コンラン(1931〜2020)。日本初の展覧会となる「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」が東京ステーションギャラリーで開催されている。会期は2025年1月5日まで。 テレンス・コンランは1931年ロンドン生まれ。1964年にライフスタイルを提案する小売店「ハビタ」をオープンし、成功を収める。1973年に「ザ・コンランショップ」を開店。レストラン運営や出版、都市開発など幅広い分野で活動し、1989年に産業デザインに特化した世界初の「デザイン・ミュージアム」を開館。1994年に日本で「ザ・コンランショップ」第1号をオープンし、国内でも注目を集めた。2020年、89歳の誕生日の前に、バートン・コート自邸にて死去。 個人の生活空間から社会までを広く視野に入れた活動でデザイン業界を牽引したコンラン
大阪・国立国際美術館で11月2日から2025年1月26日にかけ特別展「線表現の可能性」が開催中だ。本展は、美術館のコレクションのなかから版画・素描を中心に、絵画、彫刻、写真を加えた約150点を選び、現代アートにおける線表現の多様性を知ることができる。4章を通して絵画における線の役割とその可能性について検証する本展を、美術家、美術批評家の石川卓磨が読み解く。【Tokyo Art Beat】 タイトルが可能にしたもの「線表現の可能性」とは、多くの作家の関心を惹きつける、美術史全体を貫く大きなテーマを成している。しかし同時に、この射程の広さは、本展を語ることの困難さを与えている。この困難を乗り越えるための方針を見つけなければ、「線表現の可能性」を論じることはできない。本展も「線表現の可能性」の全体を包括するものではなく、国立国際美術館の所蔵作品を基に構成された展示である。したがって、美術史におけ
アート・文化助成金の停止と税率引き上げオランダの9月第3火曜日、プリンシェスダーグ(Prinsjesdag、王子の日)は、新しい議会年度の幕開けとなる重要な日だ。この日、オランダ国王は玉座から演説を行い、その年の政府の主要政策や計画を発表する。国王の演説には、その年の政府の重要政策や計画が盛り込まれ、経済や社会、文化に対する政府の方針が明らかにされる。この演説は予算編成に大きく関連しており、予算案を含むその年の政府の重要な計画が含まれていることから「Budget Day(予算の日)」と呼ばれている。今年度は多くのアート文化機関や関係者、そして市民がこの日を不安とともに迎えた。というのも、これまで14年間リベラル派の自由民主国民党(VVD)が率いて来た連立政権が崩壊し、7月2日より極右政権が発足したためである。 新連立政権は4つの政党からなり、ディック・スホーフが率いることとなった。連立政権
ヴェネチア・ビエンナーレとはヴェネチア・ビエンナーレは、イタリアのヴェネチアで1895年より2年に1度開かれる世界でもっとも有名な芸術祭のひとつ。一部では「美術界のオリンピック」とも呼ばれ、国別のパビリオン、テーマを設けた大規模な企画展がヴェネチアの街の各所で開催されるアート一色の7ヶ月間となる。今年は11月24日まで開催中だ。 日本は1952年の第26回から国として公式に参加を始め、56年にジャルディーニ内に日本館を建設し、以降美術展に継続して参加。91年からは建築展への公式参加も行ってきた。日本の美術展・建築展を主催するのは、日本の外務省が所管する独立行政法人のひとつ、国際交流基金だ。 国際交流基金は総合的に国際文化交流を実施する日本で唯一の専門機関(*1)であり、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究と国際対話という3つの軸で活動を展開。 ヴェネチア・ビエンナーレには1976
序 現在、西洋美術史を必要としているのは誰か。日本では洋楽離れや洋画離れが指摘されて久しいが、美術も同様の状況にあるように思われる。かつて社会現象を巻き起こすほどの影響力を持つロックバンドが姿を消したように、多くの美大生たちに強い影響を与えるような世界的なアーティストはもうない。映画や音楽などの文化・芸術の産業や市場でグローバリズムが進行している状況と解釈できる。 グローバリズムの浸透に伴い、西洋中心主義や植民地主義が強く批判されるなかで、文化多元主義や脱植民地主義の思想や運動が強まり、これまで学んできた西洋美術史がその前提から批判され、美術史の相対化が進行し、歴史を単線的な物語として語ることは難しくなってきている。しかし、西洋美術史を解体することで負の側面が解消され、問題は本当に解決するのだろうか。また、これまでの美術史が持っていた社会的意義を考えれば、単純な解体や忘却はむしろ悪影響をも
私が山田尚子作品と聞いて思い出すのは映画『リズと青い鳥』(2018)に代表される女性間の強烈な愛にまつわるような作品だ。近作のテレビシリーズ『平家物語』(2021)でも、権力者に使われることに倦んだ祇王と仏御前というふたりの女性が最後には出家しともに祈るようになるまでの人生の歩みを、短いながらも濃厚に描いていた。 そんな山田監督による8月30日に公開された最新作『きみの色』は本編が始まった瞬間から息を止めたくなるほどに脆く見える世界を提示する。それは女性間の親密さを描くとともに、その先にあるものを描き出そうとする作品でもあった。 『きみの色』予告編 沈黙と緊張『リズと青い鳥』で山田監督は「彼女たちの尊厳を守りたいというか、彼女たちにぐいぐいカメラを向けないように気を使いました」(*1)と語っていたが、『きみの色』では同作以上にカメラが映す場面は制限されている。 キャラクターたちが抱える葛藤
梅沢和木×布施琳太郎×GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEインタビュー:「スーパーフラット」以降の日本現代アートの20年【Tokyo Art Beat 20周年特集】 Tokyo Art Beat設立20周年を記念する特集シリーズ「これまでの20年 これからの20年」。1980〜90年代生まれのアーティスト3名が「スーパーフラット」以降の日本現代アートや、いまのアートシーンの実感について語る(構成:今野綾花) Tokyo Art Beat設立20周年を記念する特集シリーズ。「これまでの20年 これからの20年」と題して、6つのテーマで日本のアートシーンの過去・現在・未来を語る。 第2弾となる本稿では、アーティストの梅沢和木、布施琳太郎、GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(ギロチンドックスギロチンディ)の3名が「『スーパーフラット』以降の日本現代アート」のテーマ
実際に「おじさん」ばかりだが…?8月21日、自由民主党が9月12日~27日に実施する総裁選挙に向けて、歴代総裁が登場する総裁選挙のポスターとウェブ動画を公開した。同日にTBS系の報道番組「news23」で、タレントのトラウデン直美氏が「おじさんの詰め合わせって感じがする」とポスターの印象を述べたところ、ネットを中心に賛否両論が起きている。 実際にポスターにいるのは「おじさん」や「おじいさん」と言っても良さそうな高齢男性ばかりだ。そして、そうした人々だけが自民党総裁を務めてきたことを端的に示すこのポスターは、日本の政治の男性中心主義とジェンダー不平等を反映している。タレントの「おじさんの詰め合わせ」発言を「男性差別」だと批判するなら、そもそも中高年男性だけが自民党の総裁や日本の首相という権力の座に就き続けてきた状況を下支えする、圧倒的な女性差別(加えてLGBTQをはじめとする様々なマイノリテ
東京国立博物館で内藤礼にインタビュー国内外で環境と対話する空間作品を手がける美術家の内藤礼が、上野の東京国立博物館の建築空間と収蔵作品に向き合って作り上げた展覧会「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が、9月23日まで開催されている。同館とエルメス財団との共同企画。9月7日から銀座メゾンエルメス フォーラムで連携する個展も行われる(会期は2025年1月13日まで)。 内藤礼は1961年広島県に生まれ、現在は東京を拠点に活動する。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに、光や水、空気などの自然事象と、糸やビーズ、布といった日常のささやかな物を用いて、生の光景を見出す作品を追求してきた。本展は、東京国立博物館の3つの場所(平成館企画展示室、本館特別5室、本館1階ラウンジ)で構成され、鑑賞者は回遊しながら同館が所蔵する縄文時代の土製品と内藤による作品が混ざり合い、時空を超え
「家族」を描くドラマとしてまさか、自分が朝ドラを毎日観見るようになるとは思わなかった。でも面白いから見てしまう、NHKプラスで。みなさんも、ですよね。 みなさんもご存じのとおり、2024年4月から朝の連続テレビ小説として放映されている『虎に翼』は、日本では最初の女性弁護士のひとりをモデルにした猪爪(佐田)寅子(ともこ)の物語である。 このドラマをフェミニズムに関係ない、という人はいないと思う。法律、憲法、人権といった多様な視点から語ることができるから、私よりよほどうまく語れる人はいくらでもいると思う。ただ、私はこの物語がもっとも中心的に描こうとしているものとして「法」のほかに「家族」があるのではないかと思う。だがその前に、少し本ドラマの根底にある姿勢のようなものについて書いてみたい。
ヴィヴィアン・サッセン PHOSPHOR|発光体:アート&ファッション 1990~2023 京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡) Presented by DIOR In collaboration with the MEP - Maison Européenne de la Photographie, Paris ©︎ Kenryou Gu-KYOTOGRAPHIE 2024
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