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新内閣発足
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ロングフル・ライフ訴訟と非同一性問題 中澤 務 この論文では、いわゆる「ロングフル・ライフ(Wrongful Life)訴訟」に代表される ような、 生命の誕生を巡る場面で生じてくる倫理的問題を取り上げる。 そこでは、 非 「 同一性問題」 と呼ばれる倫理学上のパラドクスが問題の考察に混乱を与えている。 そ れゆえ私は、 このパラドクスに対する批判的考察を中心に議論を展開し、 問題を正し く捉えるための方策を考えたい。 I 「非同一性問題」 「非同一性問題(Non-Identity Problem)」 主に世代間倫理を巡って問題にされてき は、 たものであるが 、 最近では世代間倫理という文脈を離れ、 生命の誕生に関わる広い 文脈において深刻な問題を引き起こしているように思われる 。 まず、 このパラドク スがどのようなものであり、 また、 生命の誕生の場面においてどのような
「安楽死」をめぐる清水・立岩論争のメタ倫理学的考察 安彦一恵 本稿は、京都生命倫理研究会および京都大学PASTAプロジェクトとの共催で行なわれた 2005 年 9 月 25 日の研究会(於:京都大学文学部)での口頭報告「二重結果説のメタ倫理 学的考察」のうち、清水哲郎・立岩真也両氏間の論争の考察に関わる部分を一つの論稿と して纏めたものである 1 。両氏間の論争とは、 少なくとも論理的には、 「死なせることが唯一の[苦痛]緩和の途である時に、死なせ る行為をする」 ことが倫理的に正当化される場合があり得る。 ( 『医療現場に臨む哲学Ⅱ』 勁草書房 2000 ― 以下、2000 と略記 ― 、85. 引用文中の[ ある。以下も同様) と説く清水(以下敬称略)に対して、立岩が 死は手段であって、緩和に伴う結果であって、だからその行ないは死に至らせることで はない。このように[清水は]言う。…
『いのちをめぐる倫理』(99年度北海道大学公開講座「生命(いのち) --- テクノロジーと倫理」講義草稿) 1 はじめに --- 問題の端緒 この「生命(いのち) --- テクノロジーと倫理 --- 」という講座において私に与えられたのは、「いのちをめぐる倫理を考える」という課題です。もちろん、「いかに生きるべきか」というのが倫理学の根本的な問いであるとすれば、倫理学は古くから「いのち」の問題と向き合ってきたわけですが、しかしいまこのような課題があらためて設定されるのは、近年の科学技術の急激な発展によって、われわれの「いのち」をめぐる状況が大きく変化し、「いのち」のあり方や価値が問い直されるような事態が生じてきているからに他なりません。生命倫理や環境倫理が広く人々の関心を集め、それらに関する著作がすでに無数に出版されているということが、そのことを物語っています。 生命倫理と呼ばれる領
道徳判断の「実行可能性」と「非記述的意味」 都築 貴博 はじめに 以下の小論では、 「道徳的相対主義(moral relativism) 」をとりあげる。ここにいう 道徳的相対主義とは、 「規範的 normative) 立場としてのそれではなく ( 」 「メタ倫理学 的(meta-ethical) 」立場としてのそれである 。規範的な道徳的相対主義は、自分と は異なる諸価値を受容する人々に対してどう振る舞うべきかに関する理論であり、 メ タ倫理学的な道徳的相対主義は、 道徳判断の意味、 真偽、 正当化可能性に関する理論 である。 メタ倫理学的な道徳的相対主義は、 「道徳的枠組 moral framework) に対す ( 」 る道徳判断の意味や真偽の相対性を指摘し、 また、 自分の 「道徳的枠組」 に立脚した 道徳判断は他の 「道徳的枠組」 の構成員に対しては正当化可能でないと論ず
伊藤勝彦・坂井昭宏共編『情念の哲学』東信堂、1992年3月、246〜72頁 平等感情と正義―QALYsに基づく医療資源配分― 1 資源配分論のふたつのジレンマ 正しい資源配分のあり方にかかわる問題、いわゆる配分的正義の問題には、ふたつのジレンマがあるように思われる。そのひとつは、配分的正義に関する伝統的見解が自己撞着的な表現を使用せざるを得なかった、という点にある。 常識的には、正義とは平等な権利を意味するように、正義と平等との間には密接な関係がある。歴史上の社会的正義の実現を求めた闘争、たとえば奴隷制、専制政治、植民地主義に対する闘争、小数民族および女性解放運動などは、いずれも平等な権利を要求する運動であった。両者の密接な関連は、言葉の上でも明かである。「不正は不平等であるとすれば、正しさは平等である。これは論証をまたずに誰でもが認めるところである」とアリストテレスはいう。 しかし、
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