(図:筆者作成) 今日紹介する論文は、脳から免疫まで範囲が広く、また新しい方法が使われており、基礎知識がないと理解しにくいと思う。それでも、この論文が示す自閉症予防や治療の可能性に感銘を受けた私は、それを承知で紹介することにした。 妊娠中の炎症は脳の発達障害につながる昨年世界中の妊婦さんを震撼させたZikaウイルスによる小頭症の例からわかる様に、妊娠中の感染症は胎児の発達に大きな影響がある。Zikaウイルスは胎児の脳細胞に直接感染して細胞を殺すために脳に発生異常が起こる。しかし、最近問題になっているのは、細菌やウイルス感染によって誘導される母体内の炎症反応が、明瞭な脳の発達異常ではなく、脳の小さな領域の構造異常を引き起こし、自閉症スペクトラムが発症することだ。 実際、母親の炎症と自閉症スペクトラム発症の相関を示す臨床データが積み上がっている。 例えば最近の論文では、妊娠13-28週で38.