ああ、なんと愚かな十年だったろう。 私は任天堂を信じていた。いや、信じていたというより、すがっていたのだ。 学生のころ、ひとり暮らしの下宿で初めてWiiを手にした夜を、いまでもよく覚えている。 テレビの光の中で、マリオが跳ねていた。 彼の「やったー!」という声が、まるで私に向けられた祝福のように思えた。 あの瞬間、私は世界に赦されたような気がしたのだ。 それからの私は、まるで信者だった。 ダイレクトのたびに心を震わせ、Switchを両手で抱きしめていた。 会社でも、家でも、任天堂の話ばかりしていた。 同僚は呆れた顔で笑ったが、私はむしろ誇らしかった。 彼らはまだ「遊びの意味」を知らないのだと思った。 結婚も、恋も、金も、そんなものはくだらぬ現実の鎖にすぎない。 任天堂の世界だけが、私を救ってくれる。 ──本気で、そう信じていた。 しかしある日、ニュースを見た。 Switch 2が発表された